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展示室1 温室効果ガスに関する基礎知識

 工業化時代以降、特に20世紀に入ると急速に、二酸化炭素(CO2)、メタン(CH4)、一酸化二窒素(N2O)、人工物質であるハロカーボン類などの温室効果ガスが増加しています。これらの増加がもたらす地球温暖化は、自然の生態系や人間社会に大きな影響を及ぼすことから、人類の生存基盤を揺るがす問題となっています。
 このため、気候変動に関する国際連合枠組条約などのもとで世界各国が温室効果ガス排出削減などに向けた対策に取り組むとともに、これら大気成分の濃度変化について世界各国の協調のもとで組織的な観測・監視が行われています。


温室効果ガスの大気中濃度および気候の変化

大気中濃度

過去11000 年(上図)及び西暦900年以降(下図) 西暦1900年までの二酸化炭素(緑色)、メタン(橙色)及び一酸化二窒素(茶色)の大気中濃度。
測定値は氷床コア(異なる形状の印は異なる研究を示す)によるもの。出典:IPCC第5次評価報告書(2013)



世界平均地上気温

3つのデータセットによる、1850年から2012年までに観測された陸域と海上とを合わせた世界平均地上気温の偏差。
上図:年平均値、下図:10年毎の平均値(黒色のデータセットについては不確実性の推定を含む)。1961~1990年平均からの偏差。

出典:IPCC第5次評価報告書(2013)



世界的な気候の変化に関する複数の観測指標のグラフ

図 世界的な気候の変化に関する複数の観測指標

(a) 北半球における積雪面積の3~4月(春季)の平均値; (b) 北極域の海氷面積の7、8、9月(夏季)の平均値; (c) 1971年の全データセットの平均を基準とした世界平均海洋表層 (0~700 m)の貯熱量の変化(2006~2010年の期間で各データを合わせてある); (d) 最も長期間連続するデータセットの1900~1905年平均を基準とした世界平均海面水位(全データは、衛星高度計データの始めの年である1993年で同じ値になるように合わせてある)。
すべての時系列(色つきの線はそれぞれ異なるデータセットを示す)は年平均値を示し、不確実性の評価結果がある場合は色つきの陰影によって示している。

出典IPCC第5次評価報告書(2013)



人間活動の影響を受ける温室効果ガスの例

  CO2
二酸化炭素
CH4
メタン
N2O
一酸化二窒素
CFC-11
クロロフルオロカーボン
HFC-23
ハイドロフルオロカーボン
SF6
六フッ化硫黄
CF4
四フッ化炭素
工業化以前の濃度 278±2 ppm 722±25 ppb 270±7 ppb 存在せず 存在せず 存在せず 34.7±0.2 ppt
2011年の濃度 391±0.2 ppm 1803±2 ppb 324.2±0.1 ppb 238±0.8 ppt 24.0±0.3 ppt 7.28±0.03 ppt 79.0±0.1 ppt
濃度の変化率a 2.0 ppm/年 4.8 ppb/年 0.8 ppb/年 -2.2 ppt/年 0.9 ppt/年 0.3 ppt/年 0.7 ppt/年
大気中の寿命b 12.4年 121年 45年 222年 3,200年 50,000年

  ※IPCC第5次評価報告書(2013年)をもとに作成
  ※ppmは容積比で100万分の一、ppbは容積比で10億分の一をあらわす。
  a 変化率は、2005~2011年の平均値。
  b 大気中の寿命は、メタンと一酸化二窒素については応答時間(一時的な濃度増加の影響が小さくなるまでの時間)を、その他の温室効果ガスについては滞留時間(気体総量/大気中からの除去速度)を掲載。二酸化炭素は、吸収プロセスによって吸収速度が異なるため寿命は1つの値で表せない。

二酸化炭素(CO2

 二酸化炭素は、地球温暖化に及ぼす影響がもっとも大きな温室効果ガスです。化石燃料の燃焼とセメント生産及び森林伐採などの土地利用の変化が、大気中の二酸化炭素濃度を増加させています。工業化以前の時代からの大気中二酸化炭素濃度の増加の6割以上が化石燃料の燃焼やセメント生産によるものです。残りの増加は、森林伐採及びその他の土地利用の変化によるものです。これらの増加はすべて人間の活動に起因します(IPCC第5次評価報告書、2013)。

メタン(CH4

 メタンは、二酸化炭素に次いで地球温暖化に及ぼす影響が大きな温室効果ガスです。その放出源は、湿地や水田、家畜や天然ガスの生産、バイオマス燃焼など、多岐にわたります。メタンは、主に大気中のOHラジカル(ラジカルとは非常に反応性が高く不安定な分子)と反応し、消失します。

一酸化二窒素(N2O)

 一酸化二窒素は大きな温室効果を持つ気体であり、大気中の寿命は121年です。海洋や土壌から、あるいは窒素肥料の使用や工業活動に伴って放出され、成層圏で主に太陽紫外線により分解されて消滅します。

ハロカーボン類

 ハロカーボン類は、フッ素、塩素、臭素などを含んだ炭素化合物の総称であり、その多くは本来自然界には存在しない人工物質です。これらは直接温室効果ガスとして働く一方で、成層圏のオゾン層を破壊することにより、間接的には寒冷化をもたらす働きもあります。ハロカーボン類の大気中濃度は二酸化炭素に比べ100万分の1程度ですが、単位質量あたりの温室効果が数千倍と大きいため、わずかな増加でも地球温暖化への影響は大きくなっています。また、大気中の寿命が比較的長いことから、その影響は長期間におよびます。「オゾン層を破壊する物質に関するモントリオール議定書」、「特定物質の規制等によるオゾン層の保護に関する法律」により国際・国内的に生産等の規制がなされています。

一酸化炭素(CO)

 一酸化炭素は、その主な放出源が化石燃料やバイオマスの不完全燃焼およびメタン等炭化水素類の酸化過程であり、大気中のOHラジカルとの反応により消失します。一酸化炭素は地球表面からの赤外放射をほとんど吸収しないため、温室効果ガスではありません。しかし、地上から高度約10kmまでの対流圏のオゾンの前駆物質であるとともに、OHラジカルとの反応を通して他の温室効果ガス濃度に影響を与えます。

対流圏オゾン(O3

 対流圏(地上~高度約10km)に存在するオゾンは、温室効果ガスであるとともに、反応性が高く、大気中でOHラジカルを生成させ、これがメタン等と反応するため、他の温室効果ガスの大気中濃度に影響を与えます。対流圏オゾンは、窒素酸化物(NOx)の存在下で一酸化炭素や炭化水素類の光化学反応で生成され、水素酸化物(HOx:HO2およびOH)との反応によって消失します。また、成層圏から対流圏に輸送され、地表付近では地面に触れて消失します。その濃度は地域、高度、時期により大きく異なります。さらに、オゾンが大部分を占める光化学オキシダントは人間の呼吸器や皮膚に被害を与えることがあり、わが国の環境基準は1時間平均値で0.06ppm(60ppb)以下とされています。