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展示室4 一酸化炭素濃度の季節変動、地域差

30度緯度帯ごとの大気中の一酸化炭素濃度の長期変動成分を除いた季節変動。

30度緯度帯ごとの大気中の一酸化炭素濃度の平均的な季節変動(1992~2015年)
月平均濃度の誤差範囲は±1σ(24年間の月平均濃度の標準偏差)を示す


 30度ごとの大気中の一酸化炭素濃度について、季節変動成分のみを抽出した緯度帯別月平均濃度を示す。 北半球の各緯度帯では2~3月に濃度極大、7~8月に濃度極小となる。 南半球では、各緯度帯ともに10月に濃度極大となり、濃度極小は中・高緯度で2~3月、低緯度で5月に出現する。 なお、南半球低緯度では、北半球からの高濃度空気の流入によると思われる濃度極大が2月に見られる。

 南半球低緯度の季節変動が南半球中高緯度と異なっているのは、 北半球の空気が赤道を越えて南半球に流入するためで、 二酸化炭素やメタンと同様に高濃度の北半球の影響が南半球に及んでいることを示している。 季節変動の振幅は北半球では南半球の3~4倍の大きさである。

 メタンと同様、主な一酸化炭素の消失過程はOHラジカルとの反応であり、 OHラジカル濃度が高まる夏季に一酸化炭素濃度は減少する。 しかし、大気中での寿命の違い、放出量・生成量の季節変動の違いから、 一酸化炭素濃度の季節変動の形はメタンの場合と明らかに異なっている。 気温の高い夏季に放出量が大きいメタンの濃度は極小を過ぎてから急速に増加するのに対し (Saeki et al., 1998)、 放出・生成量の季節変動の小さい一酸化炭素は秋季から翌年の春季にかけて比較的単調に増加する。

 直接の一酸化炭素の放出が特有の季節変動を引き起こすことがある。 南半球の熱帯・亜熱帯地域では毎年8~10月の乾期末に焼き畑や森林火災などバイオマス燃焼を起源とする一酸化炭素が放出される。 南半球の低緯度で8~10月に比較的大きな一酸化炭素の濃度増大があるのはこの影響とみられる。 全球の一酸化炭素濃度分布のモデルシミュレーションによると、その季節ごとの地域分布はバイオマス燃焼のような局地的な放出源の影響を 強く反映している(Bergamaschi et al., 2000; Holloway et al., 2000)。 地表だけでなく、南半球太平洋上の対流圏上層でも10月から11月にかけて熱帯のバイオマス燃焼の影響を受けていることがわかっている (Matsueda et al., 1998)。

参考文献

Bergamaschi, P., R. Hein, M. Heimann, and P. J. Crutzen, 2000: Inverse modeling of the global CO cycle, 1. Inversion of CO mixing ratios. J. Geophys. Res., 105(D2), 1909-1928, 10.1029/1999JD900818.

Holloway, T., H. Levy II, and P. Kasibhatla, 2000: Global distribution of carbon monoxide. J. Geophys. Res., 105(D10), 12123-12148.

Levine, J. S., 1999: The 1997 fires in Kalimantan and Sumatra, Indonesia: Gaseous and particulate emissions. Geophy. Res. Lett., 26, 815-818.

Matsueda, H., H. Inoue, Y. Sawa, Y. Tsutsumi, and M. Ishii, 1998: Carbon monoxide in the upper troposphere over the western Pacific between 1993 and 1996. J. Geophys. Res., 103, 19093-19110.

Novelli, P. C., K. A. Masarie, P. M. Lang, B. D. Hall, R. C. Myers, and J. W. Elkins, 2003: Reanalysis of tropospheric CO trends: Effects of the 1997-1998 wildfires. J. Geophys. Res., 108(D15), 4464, doi:10.1029/2002JD003031.

Saeki, T., T. Nakazawa, M. Tanaka, and K. Higuchi: 1998: Methane emissions deduced from a two-dimensional atmospheric transport model and surface measurements. J. Meteor. Soc. Japan, 76, 307-324.