気象庁 | 気候リスク管理技術に関する調査(アパレル分野)


D社 レディースコート(地域別)

1. 販売数と気温の関係を調べる

日本国内主要7地域でのレディースコートの販売数(指数化した値)と、それぞれの地域での平均気温との関係をみる。
季節の進みとともに気温が下がっていく8月下旬から12月下旬の期間が対象。

用いたデータ

  • 気象データ:各地域(福岡、広島、大阪、名古屋、東京、仙台、札幌)の2012年の週平均気温
  • 販売データ:各地域所在店舗におけるレディースコートの2012年の週別販売指数(各地域において最も売れた週を最大値として指数化)
    • 週の曜日区切りは月曜日から日曜日までとしている。
    • 同系列の色が各々の地域に対応している。

結果

  • 気候差と連動して、北海道でのコートの立ち上がりが最も早い。ついで仙台が早いが、それ以外の地方間のずれは1週間内外である。 東京以西の地域でのコートの立ち上がりの時期ズレはほとんどないが、大阪のみは立ち上がりが1週程度後ろにずれている。
  • 販売数の伸びが大きくなる気温には地域差があり、必ずしも全地域において18℃に達した際に販売数の伸びが大きくなるわけではない。 その地域ごとにデータを詳しく解析することが重要である。


2. 2週間先の予測に基づく対応策(2012年の天候推移を事例として)

レディースコートの販売指数と気温の関係は東京のデータにおいて明瞭となった。 それ以外の地域ではまだデータ量が少なく明瞭な関係がみられたとはいえないが、東京における販売指数と気温の関係が他の地域にも適用できると仮定する。 その関係を利用し、気象庁が発表する異常天候早期警戒情報の2週間先の気温予測を活用した対応策を、2012年の実際の予測を例に示す。

2週間先の予測に基づく対応策案

  • 用いた予報:平成24年9月11日から10月16日に発表された異常天候早期警戒情報
  • 予報内容:下表参照

発表日 7地域での、平均気温が18℃を下回る確率密度グラフ
9月11日(火)


札幌 23% 仙台 0%

9月18日(火)
札幌 78% 仙台 1% 東京 0% 名古屋 0%
9月25日(火)
札幌 78% 仙台 1% 東京 0% 名古屋 0%

大阪 0% 広島 0% 福岡 0%
10月2日(火)


仙台 90% 東京 3% 名古屋 6%

大阪 1% 広島 9% 福岡 3%
10月9日(火)


仙台 99% 東京 28% 名古屋 60%

大阪 22% 広島 47% 福岡 11%
10月16日(火)




東京 70% 名古屋 92%

大阪 69% 広島 88% 広島 63%

  • 対応策案
    • レディースコートの展開が始まる頃から、全国支店のある都市別に、平均気温が18℃を下回る確率のチェック。
      札幌での確率が20%を超え、販売が伸びる気温に達する可能性が出てきたことから、9月中旬後半から札幌では展開開始(9月11日の予測に基づく)。仙台では10月にはいってから。
      関東・東海・広島では10月中旬前半から。近畿・九州では10月中旬後半から。
      このように本部から各支店に対して展開時期のモニタリングと指示を行う。


【アパレル協力社からのコメント】
分析の結果、販売数が大きく伸びる基準温度とされた温度に達する確率の値によって、考えられる影響を示唆。
各シーズン、エリア毎に基準温度の確率を各店に毎週通知することで、段取り事前準備がはかどることが期待される。

例)38週


基準温度福岡広島大阪名古屋東京仙台札幌
冬コート18℃10%10%10%10%10%40%90%

雨雪日数1.5日1.5日2.2日2.5日2.5日2.4日2.5日

※ 春=春コート(基準温度?℃)、夏=カットソー(基準温度?℃)、秋=ニット(基準温度27℃)
※ 雨雪日数の地点別予測は気象庁では作成していないため、過去30年(1981~2010年)平均の1.0mm/日以上の降水日数を利用。

天候検証

本調査対象期間の2012年の夏から秋は、8月下旬から10月上旬にかけて、北日本から東日本で厳しい残暑となった。
9月は北日本で月平均気温の高い記録を更新した。10月中旬以降は顕著な高温傾向は解消し、東・西日本は平年並となった。 東・西日本では11月上旬から、北日本では11月中旬後半から気温が平年を下回った。


他の事例をみる

販売数と気象要素との関係を調べた事例一覧

  アイテム別の販売数と気温との関係

  秋冬用肌着トップ    ロングブーツ    サンダル    ニット帽子    ブルゾン   ニット    コート(  F社  D社  地域別 )

  アイテム別の販売構成比の気温との関係

  レディースウェア    インナーアイテム   

  素材別の販売構成比と気温との関係

  コート    帽子

  気温以外との関係

  日傘   雨用靴


(参考)調査報告書

このページのトップへ