画像特性(バンド7)

バンド7は赤外領域の短波長側の3.9μmに中心波長を持ち、ひまわり6号・7号の3.8μm(赤外4)の後継として利用されています。太陽放射と地球からの黒体放射を図1に示します。3.9μm帯の観測波長では地球の放射と太陽放射の両方が寄与する領域であるため、日中は太陽放射の反射の影響も大きく受けます。

そのため、日中(太陽光の当たる領域)は地球表面や雲からの放射と太陽光の反射の両方の合算が画像化されます。夜間の領域では太陽光反射エネルギーの寄与はないため、地球表面や雲からの放射のみの赤外画像としての特徴を持ちます。 夜間の画像の特徴は、バンド7差分画像で紹介をします。

図1 黒体放射のスペクトル(GoodyandYung,1989および気象衛星センター,2005)。

日中のバンド7画像の反射特性

日中の3.9μmの観測波長帯では、地球表面や雲から直接射出されるエネルギーと太陽光の反射の両方が観測されます。3.9μm帯における水雲と氷晶雲の反射特性を図2に示します。3.9μm帯の反射率は雲粒子のサイズ(粒径)と相(水相/氷相)に大きく依存します。粒径については小さいほど反射率が大きい傾向を持ちます。 同じ粒径の水滴・氷粒では水滴の反射率が大きくなります。このような性質のため、小さな水滴を含む下層雲は氷晶雲(上層雲)よりも暖かく(暗く)観測されます。同じ下層雲でも海上の下層雲(粒径大)は陸上の下層雲(粒径小)より冷たく(明るく)観測されます。

図2 3.9μm帯での水雲と水晶雲の反射特性(横軸:粒子半径 縦軸:反射率)(放射伝達モデル RSTAR (Nakajima and Tanaka(1986), Nakajima and Tanaka(1988), Stamnes et al.(1988)) によるシミュレーション)

このように3.9μm帯の反射特性を利用し、雲粒子の組成を判別することが可能です。しかし、先に述べたように日中は反射エネルギーのほか、地表面・雲などの放射の合算値が観測されるため画像のみからでは判別が困難です。この問題を解決するため、10μm帯などの窓領域観測データを利用して3.9μm帯のデータから太陽光反射成分を近似的に抽出する手法が開発され欧州の静止気象衛星であるMSG画像で以前から利用されています(Kerkmann,2004)。

図3に日中のバンド7とEUMETSATの手法を適用したバンド7太陽光反射成分の画像を示します。可視画像・近赤外画像と同様に反射強度に変換して画像化しており、反射の大きいところは明るく表示しています。バンド7太陽光反射成分を抽出した画像は、RGB合成画像でも活用されています。

図3 日中のバンド7(上)とEUMETSATの手法を適用したバンド 7 太陽光反射成分(下)の画像例。

夜間のバンド7画像の特性

夜間の画像の特徴は、バンド7差分画像で紹介をしています。