画像特性(バンド13)

バンド13は10.4μmに中心波長を持ちます。赤外バンド波長(波数)帯における大気中の気体分子による吸収特性を図1に示します。このバンドは図1に示すように大気中の水蒸気の吸収の影響を受けにくい窓領域であり、その中でも特に水蒸気による吸収が少ない波長帯です。バンド13と他の赤外窓領域の差分画像を作成することで様々な情報を得ることができ、雲解析においてもっとも基本的な画像として重要です。

また、ひまわり7号および8号のデータ比較調査(Murataetal.,2015)の結果、バンド13はひまわり7号以前のひまわりシリーズに搭載された従来からの赤外(赤外1)画像と最も性質が近いため、従来の赤外衛星画像の後継として利用されています。図2にバンド13とひまわり7号の赤外1(IR1:10.8μm)の応答関数を示します(NASA,2016)。重なり合う部分もありますが、バンド13のほうが中心波長は短く幅も狭いです。

水滴・氷晶に対する吸収については、より波長の長い他の赤外窓領域と比較すると水滴・氷晶ともに吸収の影響が小さいことが示されています(図3)。このように水蒸気や水滴・氷晶による吸収の影響が小さいため、画像から放射温度を見積り、解析者による主観的な雲解析を行うことに適しています(GOES-RProgramOffice,2016)。

なお、荷重関数では地表付近に感度のピークがあり、大気の低い層の温度の情報が得られます。衛星プロダクトでは観測データが大気追跡風や高分解能雲情報の算出などで利用されます。ただし、少ないとはいえ下層の水蒸気、その他の気体分子による吸収の影響があるため、観測される輝度温度が必ずしも地表面等の温度そのものに対応するわけではないことに注意が必要です。

バンド13を含む赤外画像では水平解像度(衛星直下点)が4kmから2kmに向上したことにより、従来の赤外画像では見られなかった微細な構造を見ることができるようになりました。たとえば火山の火口で従来の解像度では捉えられなかったホットスポットが、ひまわり8号のバンド13で確認できる例を図4に示します。

図1 赤外バンド波長(波数)帯における大気中の気体分子による吸収特性。縦軸は透過率、横軸は波数、赤線と最上段の赤字はひまわり 8 号の観測バンドを示す(Clerbaux et al., 2011 に一部追記)。
図2 バンド13とひまわり7号の赤外1(IR1:10.8μm)の応答関数(縦軸:相対応答、横軸:波長)(NASASpectral ResponseFunctionDatabaseより作成://cloudsgate2.larc.nasa.gov/cgi-bin/site/showdoc?mnemonic=SPECTRAL-RESPONSE)。
図3 赤外域の各観測波長帯(緑色の波長帯)における水滴・氷晶それぞれの吸収に関わる複素屈折率虚部(消衰係数)(縦軸:消衰係数、横軸:波長)(HaleandQuerry,1973(water)およびWarren,1984(ice)より作成)。
図4 水平解像度の向上による微細な構造(火山火口のホットスポット)が識別できる例。矢印の先端付近の黒い点がホットスポット。上がひまわり7号のIR1(10.8μm)画像、下がひまわり8号のバンド13画像。