長期変化傾向(トレンド)の解説
このページでは、地球温暖化やヒートアイランド現象などの解析で用いている「長期変化傾向(トレンド)」について解説します。
なお、折れ線グラフによる気温を例に解説していますが、棒グラフで示している降水量や階級別回数(1時間降水量50mm以上の発生回数など)でも考え方は同じです。
長期変化傾向(トレンド)とは
気象庁では、地球温暖化やヒートアイランド現象といった人為起源の気候変動の解析などのために、長期変化傾向を用いています。 |
図1 経年変化を示したグラフの例(ある地点の年平均気温偏差) |
詳しい説明
なぜ長期変化傾向を算出するのか
ひとつの季節の中でも暑い日や寒い日があるように、年によっても暑い年や寒い年があります。このような年ごとの違いは、地球温暖化やヒートアイランド現象といった人為的な影響の有無にかかわらず起こりうる自然の変動です。自然変動には、地球の気候がもともと持つ変動する性質(年ごとの違いのほか、エルニーニョ・ラニーニャ現象といった数年の周期を持つものや、太平洋十年規模振動などの十年から数十年の周期を持つものが知られています)によるものと、火山活動や太陽活動の変化のような気候以外の自然の影響によるものがあります。観測で得られる各年の値は、このような様々な周期の自然変動と人為起源の気候変動を含んだものとなります。 |
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図2 様々な周期の自然変動と人為起源の気候変動の重ね合わせ |
長期変化傾向の算出方法とその評価について
長期変化傾向の変化の割合は、前述のように年々の値の回帰直線の傾きとして算出します。具体的には最小二乗法という方法を用いて、年ごとの値と、ある直線上におけるその年の値との差(図3の緑矢印)を2乗し、これを期間にわたって合計した値が最小となるように、直線の傾きと縦軸との交点を定めます。これが回帰直線であり、その傾きが変化の割合となります。 |
図3 最小二乗法で用いる各値 |
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表1 偶然性の評価による記述の違い
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なお、観測場所の移転に伴う影響を除去できないなど、統計期間にわたってデータが均質でない場合は、長期変化傾向の算出や評価を行っておりません。(観測場所の移転に伴う気温データの補正方法については、こちらをご覧ください。) |