展示室6 大気中一酸化炭素濃度の変動とその要因
経年変化と季節変動
図は、大気中における一酸化炭素の世界平均濃度を示しています。
一酸化炭素は、地球表面からの赤外放射をほとんど吸収しないため、温室効果ガスには区分されていませんが、OHラジカルとの反応を通じて他の主要な温室効果ガスの濃度変動に影響を及ぼすことが知られており、間接的に地球温暖化に寄与しています。一酸化炭素は、化学反応性により、比較的寿命は短く(数10日範囲)、空間変動も大きくなっています。
一酸化炭素の大気中濃度は、1990年代初め以降、徐々に減少していることがわかります。
地域差
図は、緯度帯30度毎に分割した大気中一酸化炭素濃度を示しています。
大気中一酸化炭素濃度は、緯度帯により顕著な季節変動が見られ、濃度は夏に低く、冬に高くなっています。これは、主に一酸化炭素を破壊するOHラジカルが紫外線量の増加とともに夏に豊富になるためです。また、バイオマス燃焼などによる放出がこれらの季節変動に影響していると考えられています。
経年変化と増加率
図に、30度ごとの緯度帯別の季節変動成分を除いた大気中一酸化炭素濃度(左)とその時間微分である濃度年増加量(右)の経年変化を示します。
北半球では、大気中一酸化炭素濃度はより高濃度になっています。これは、化石燃料消費やバイオマス燃焼などの主要な一酸化炭素の放出源が北半球に多く存在していることに起因しています。また、北半球では、大気中一酸化炭素濃度は期間を通じて緩やかに減少しており、この傾向は全球平均における傾向と整合しています。なお、南半球では濃度はほぼ一定で推移しています。
年増加率は大きな時間的・空間的な変動を示しており、局所的な規模・時間スケールの変動の影響を受けやすくなっています。例えば、1997~1998年にかけて主に北半球で増加率の極大が見られていますが、これらはシベリアや熱帯域での森林火災の影響であることが示唆されています(Novelli et al., 2003)。
参考文献
Novelli, P.C., K.A. Masarie, P.M. Lang, B.D. Hall, R.C. Myers and J.W. Elkins, 2003: Reanalysis of tropospheric CO trends: Effects of the 1997-1998 wildfires. J. Geophys. Res., 108, 4464, https://doi.org/10.1029/2002JD003031.