エルニーニョ監視速報(No.395)
2025年7月の実況と2025年8月〜2026年2月の見通し
気象庁 大気海洋部
令和7年8月12日

  • エルニーニョ現象もラニーニャ現象も発生していない平常の状態となっている。
  • 今後、秋にかけてラニーニャ現象に近い状態となる可能性もあるが、その状態は長続きしない。このため、ラニーニャ現象の発生には至らず、冬にかけて平常の状態が続く可能性が高い(60%)。

エルニーニョ監視指数の経過と予測

エルニーニョ監視海域の海面水温の基準値との差の5か月移動平均値の実況と予測を示した時系列グラフ
図1 エルニーニョ監視海域の監視指数(海面水温の基準値との差)の5か月移動平均値の経過と予測
エルニーニョ監視海域の監視指数(海面水温の基準値との差)の5か月移動平均値について、5月までの経過(観測値)を折れ線グラフで、大気海洋結合モデルによる予測結果(70%の確率で入ると予想される範囲)をボックスで示している。監視指数の5か月移動平均値が赤(+0.5℃以上)/青(-0.5℃以下)の範囲に入っている状態で6か月以上持続した場合に、エルニーニョ/ラニーニャ現象の発生としている。エルニーニョ監視海域の海面水温の基準値はその年の前年までの30年間の各月の平均値。

エルニーニョ監視指数の確率予測(予測期間:2025年6月〜2025年12月)

平均期間各月の確率
2025年 6月2025年4月〜2025年8月
7月2025年5月〜2025年9月
8月2025年6月〜2025年10月
9月2025年7月〜2025年11月
10月2025年8月〜2025年12月
11月2025年9月〜2026年1月
12月2025年10月〜2026年2月
高い 平常 低い
図2 各月のエルニーニョ監視海域の監視指数(海面水温の基準値との差)の5か月移動平均値が各カテゴリー(高い/平常/低い)に入る確率(%)
エルニーニョ監視海域の監視指数(海面水温の基準値との差)の5か月移動平均値が高い(+0.5℃以上)/平常(-0.4℃〜+0.4℃)/低い(-0.5℃以下)の範囲に入る確率を、それぞれ赤/黄/青の横棒の長さで月ごとに示す。気象庁の定義では、監視指数の5か月移動平均値が高(低)い状態で6か月以上持続した場合にエルニーニョ(ラニーニャ)現象の発生としているが、エルニーニョ監視速報においては速報性の観点から、実況と予測を合わせた監視指数の5か月移動平均値が高(低)い状態で6か月以上持続すると見込まれる場合に「エルニーニョ(ラニーニャ)現象が発生」と表現している。

解説

エルニーニョ/ラニーニャ現象

  • 7月の実況:エルニーニョ現象もラニーニャ現象も発生していない平常の状態となっている。 7月のエルニーニョ監視海域の海面水温の基準値からの差は-0.1℃で、基準値に近い値だった(図3)。また、エルニーニョ/ラニーニャ現象発生の判断に使用している5か月移動平均値の5月の値は+0.1℃で、基準値に近い値だった。太平洋赤道域の海面水温は西部で平年より高く、中部で平年より低かったが、東部では平年に近かった(図4図6)。太平洋赤道域の海洋表層の水温は西部で平年より高かった一方、中部から東部では平年より低かった(図5図7)。太平洋赤道域の大気下層の東風(貿易風)は中部で平年より強かったが、東部では平年程度だった。対流活動は、インドネシア付近では活発だったが、太平洋赤道域の日付変更線付近では平年程度だった(図8図9図10)。このような大気と海洋の状態は、エルニーニョ現象もラニーニャ現象も発生していない平常の状態となっていることを示している。
  • 今後の見通し:今後、秋にかけてラニーニャ現象に近い状態となる可能性もあるが、その状態は長続きしない。このため、ラニーニャ現象の発生には至らず、冬にかけて平常の状態が続く可能性が高い(60%)。 大気海洋結合モデルは、秋にかけて太平洋赤道域で貿易風が強い状態が続き、エルニーニョ監視海域の海面水温が低下すると予測しているが、大気海洋結合が弱いため長くは続かず、その後冬にかけては海面水温は上昇して基準値に近づくと予測している(図11)。また、実況では太平洋赤道域全体の冷水は蓄積されていない。以上のことから、今後、秋にかけてラニーニャ現象に近い状態となる可能性もあるが、冬にかけて平常の状態が続く可能性が高い(60%)。

西太平洋熱帯域及びインド洋熱帯域の状況

  • 西太平洋熱帯域: 7月の西太平洋熱帯域の海面水温は、基準値より高い値だった(図3)。今後、冬にかけて、基準値に近い値か基準値より高い値で推移すると予測される(図12)。
  • インド洋熱帯域: 7月のインド洋熱帯域の海面水温は、基準値に近い値だった(図3)。今後、冬にかけて、基準値より低い値か基準値に近い値で推移すると予測される(図13)。

主文におけるエルニーニョ/ラニーニャ現象の発生確率と見通しの表現

* 主文におけるエルニーニョ/ラニーニャ現象の発生確率は、図2の各月の確率を基に、エルニーニョ監視海域の監視指数の5か月移動平均値が+0.5℃以上/-0.5℃以下の状態が6か月以上持続する可能性を総合的に評価したもの。
 主文における表現は、この発生確率を基に季節単位で下表の表現を用いて記述するが、状況により異なる表現を用いることもある。
発生確率
エルニーニョ平常ラニーニャ主文における表現(発生確率は例)
現象現象
50%以上30%以下エルニーニョ現象が発生する(続く)可能性が高い(50%)
60%40%0%平常の状態が続く(になる)可能性もある(40%)が、
エルニーニョ50%40%10%エルニーニョ現象が発生する(続く)可能性の方がより高い(60%)。
現象の発生50%50%0%エルニーニョ現象が発生する(続く)可能性と
(持続)40%40%20%平常の状態が続く(になる)可能性が同程度である(50%)。
40%50%10%エルニーニョ現象が発生する(続く)可能性もある(40%)が、
40%60%0%平常の状態が続く(になる)可能性の方がより高い(60%)。
30%以下50%以上ラニーニャ現象が発生する(続く)可能性が高い(50%)
0%40%60%平常の状態が続く(になる)可能性もある(40%)が、
ラニーニャ10%40%50%ラニーニャ現象が発生する(続く)可能性の方がより高い(60%)。
現象の発生0%50%50%ラニーニャ現象が発生する(続く)可能性と
(持続)20%40%40%平常の状態が続く(になる)可能性が同程度である(50%)。
10%50%40%ラニーニャ現象が発生する(続く)可能性もある(40%)が、
0%60%40%平常の状態が続く(になる)可能性の方がより高い(60%)。
平常の状態
への移行30%以下50%以上30%以下平常の状態になる(が続く)可能性が高い(50%)。
(持続)
次回発表予定日時:9月10日14時

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