南極オゾンホールができるしくみ

 人間が大気中に放出したフロンなどのオゾン層破壊物質から発生した塩素原子によって、高度約40km付近の上部成層圏のオゾン層が 破壊されます。しかし、オゾン濃度が最も高い高度20km付近の下部成層圏では、塩素原子は通常、オゾンを破壊しない化合物 (図2の塩化水素(HCl)、硝酸塩素(ClONO2))に姿を変えており、通常はオゾン層を破壊しません。
 南極上空にオゾンホールが発生するには、オゾン層破壊物質が存在することに加え、南極特有の気象条件が重要になります。
 極域の冬季は太陽光がほとんどないため、成層圏は極めて低温になり、極渦と呼ばれる低温の渦が発達します。冬の南極大陸上空には、非常に強い極渦の西風が南極点を取り囲むように吹いており、また南極の極渦は、海陸分布の違いから、北極のそれとは違って非常に安定しています。極渦が発達した状態では、渦内外の物質循環はほとんどおこりません。成層圏は乾燥しているため、ふつう、雲が発生することはありませんが、この極渦の中では極端に低温になることで特殊な雲(極域成層圏雲)が発生します(図1)。この雲の粒子の表面で化学反応が起こり、さらに春になって太陽の光を浴びることで、フロンから発生した塩素がふたたびオゾンを破壊する成分に変化して、オゾン層を破壊するのです(図2)。

南極の上空の特殊な雲

図1 昭和基地から撮影した南極の上空の特殊な雲(極域成層圏雲)
(第49次南極観測隊撮影)



南極オゾンホールでのオゾン破壊

図2 南極オゾンホールでのオゾン破壊に関わる化学反応

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