大西洋に変動中心を持つ海面水温の偏差パターン

大西洋の海面水温の長期変動として、40°N付近の中緯度で平年より高く(低く)、その高緯度側及び低緯度側で低く(高く)なる三極パターンや、赤道に関して南北反対称な双極パターンが見られます(図:海面水温の長期変動の主要モード)。
こうした長期変動をもたらす要因は十分に解明されていませんが、北大西洋振動(North Atlantic Oscillation:NAO)と呼ばれる大気の変動との関係が指摘されています。
NAOは冬のアイスランド低気圧とアゾレス高気圧がともに強まる(弱まる)現象であり、10日程度の短い時間スケールから年々、十年、それ以上の長期トレンドといった変動を示します。十年以上の時間スケールでは、NAOと海面水温の三極パターン・双極パターンの変動は互いに相関が高く(NAO指数が負のときの海面水温偏差パターンが現れやすい)、何らかの関係があると考えられます。
北大西洋、南大西洋それぞれの領域における北半球冬季10年変動スケールSST偏差のEOF第1モードとその時間変動
:北大西洋(上)と南大西洋(中)の海面水温(SST)偏差(12-3月平均)の十年スケールで卓越する変動パターンとその時間変動(下; 黒線:北大西洋、赤線:南大西洋)。十年スケールの変動は、8〜16年のバンドパスフィルタを用いて抽出。下図には比較のためNAO指数(12-2月平均;5-20年のバンドパスフィルタを適用)を青線で示す。

参考文献
Tanimoto, Y., and S.-P. Xie, 2002: Inter-hemispheric decadal variations in SST, surface wind, heat flux and cloud cover over the Atlantic Ocean. Journal of the Meteorological Society of Japan, 80, 1199-1219.
 

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