平成19年2月28日発表
気象庁地球環境・海洋部
診断(2006年)
・2006年の黒潮は、おおむね「非大蛇行接岸流路」で流れていました。
・種子島近海から九州の東では、時折小蛇行が発生しましたが、東海沖で大蛇行に発達することはありませんでした。
東海沖(東経136〜140度)における黒潮流路の月ごとの最南下緯度(※注1)を細線で、13ヶ月移動平均値を太線で示しています。
水色の陰影部は最南下緯度が北緯32度以南である期間を、オレンジ色は黒潮大蛇行の期間(※注2:解説参照)を表しています。
(※注1)上図では1961年以降の表層水温客観解析値(0.25度格子)をもとに東海沖において深さ200mで15℃の等値線を黒潮流路としています。
解説
2006年の経過
本州南方を流れる黒潮は、2005年8月に大蛇行が終息してからは、おおむね「非大蛇行接岸流路」で流れていました。
2006年1月上旬から3月下旬にかけて、種子島近海から九州の東で小蛇行が発生して、4月には四国沖に東進しました。5月下旬から9月下旬にかけても同様に小蛇行が 発生して四国沖に東進しました。これらの小蛇行は、発達することなく四国沖で衰弱し、潮岬ではほぼ1年を通して黒潮は接岸していました 。また、衰弱した小蛇行の位相や小さな波動が東海沖を東進 した影響を受けて、伊豆諸島付近では三宅島と八丈島の間で、度々流路が変動しました。
2006年11月下旬に種子島の東で発生した小蛇行は、規模を拡大しながら北東進して、2007年1月上旬には足摺岬で離岸、1月中旬には足摺岬・室戸岬で離岸しました。 小蛇行は、1月下旬には潮岬に達して、一時的に黒潮は離岸しました 。
黒潮大蛇行について
本州南方を流れる黒潮の流路には、大きく分けて2種類の安定したパターンがあります。一方は、東海沖で南へ大きく蛇行して流れる 「大蛇行流路」、他方は、四国・本州南岸にほぼ沿って流れる「非大蛇行流路」と呼ばれているものです。 「非大蛇行流路」はさらに、関東近海で小さく蛇行する「非大蛇行離岸流路」と、東海沖を直進し八丈島の北を通過する「非大蛇行接岸流路」に分けられます。 「大蛇行流路」を「黒潮大蛇行」と呼んでいます。
東海沖の黒潮は、1960年代半ばから1970年代半ばまで、非大蛇行流路をとって流れていました。それ以降1990年代始めまでは大蛇行流路が頻繁に発生していました。 その後再び、非大蛇行流路で流れる状態が2004年前半まで続いていました。
大蛇行の発生には、黒潮流量の大小が関係していると考えられていますが、 東経137度を横切る黒潮流量の長期変動をみても、大蛇行が頻繁に発生した 時期と発生しなかった時期で、黒潮の流量に明確な違いはみられません。
(※注2)過去の黒潮大蛇行
以下の2つの条件を満たすことを、黒潮大蛇行を判定する基準としています。
(1)潮岬で黒潮が離岸している(串本と浦神の潮位差が小さい値に安定していることで判定)。
(2)遠州灘沖(東経136〜140度)での黒潮流軸の最南下点が北緯32度より南に位置する。
この基準は2006年4月から使用しています。この基準により過去の黒潮大蛇行の期間についても見直した結果、1967年以降に発生した5回の黒潮大蛇行は、 以下のようになりました。
・1975年8月から1980年3月まで
・1981年11月から1984年5月まで
・1986年12月から1988年7月まで
・1989年12月から1990年12月まで
・2004年7月から2005年8月まで