平成21年3月2日発表
気象庁地球環境・海洋部
診断(2008年)
- 1990年代初めまでは、黒潮大蛇行が頻繁に発生していましたが、それ以降は2004年7月〜2005年8月を除き、非大蛇行の状態が続いています。
- 2008年の黒潮も、非大蛇行の状態で、5月中旬以降は八丈島の南を通る非大蛇行離岸流路となっていました。
東海沖における黒潮流路の最南下緯度の経年変動(1961年1月〜2008年12月)
東海沖(東経136〜140度)における黒潮流路の月ごとの最南下緯度(※注1)を細線で、13か月移動平均値を太線で示しています。オレンジ色は黒潮大蛇行の期間(下記「黒潮大蛇行とその判定基準について」を参照。)を表しています。黒潮流路の最南下点が北緯32度より安定して南(左図の赤枠内)に位置していることが、黒潮大蛇行を判定する基準のひとつです。
(※注1)上図では1961年以降の表層水温客観解析値(0.25度格子)をもとに東海沖において深さ200mで15℃の等値線を黒潮流路としています。
串本と浦神の潮位差(串本の潮位から浦神の潮位を引いたもの)の経年変動(1961年1月〜2008年12月)
串本と浦神の月ごとの潮位差を細線で、5か月移動平均値を太線で示しています。オレンジ色は黒潮大蛇行の期間(下記「黒潮大蛇行とその判定基準について」を参照。)を表しています。潮岬で黒潮が離岸している(潮位差が小さい値に安定している)ことが、黒潮大蛇行を判定する基準のひとつです。
解説
長期変動
黒潮は、1960年代半ばから1970年代半ばまで、非大蛇行の状態でした。それ以降1990年代初めまでは黒潮大蛇行が頻繁に発生していました。その後再び、非大蛇行の状態が2004年前半まで続いていました。最近では、2004年7月〜2005年8月に大蛇行が発生しましたが、その後は、非大蛇行の状態が続いています。
2008年
2008年は、1月上旬〜中旬、2月中旬〜下旬、6月上旬〜8月中旬に、黒潮は、九州東岸から足摺岬にかけて離岸して流れました。
2月〜3月、黒潮は、東海沖を直進し八丈島の北を通過する非大蛇行接岸流路となっていました。 5月中旬以降、黒潮は八丈島の南を通る非大蛇行離岸流路となりました。東海沖で北緯32度以南まで大きく蛇行する状態や、潮岬での離岸は持続せず 、 黒潮大蛇行の状態とはなっていませんでした。
黒潮大蛇行とその判定基準について
本州南方を流れる黒潮の流路には、大きく分けて2種類の安定したパターンがあります。一方は、東海沖で南へ大きく蛇行して流れる 「大蛇行流路」、他方は、四国・本州南岸にほぼ沿って流れる「非大蛇行流路」と呼ばれているものです。 「非大蛇行流路」はさらに、東海沖をほぼ東に直進し八丈島の北を通過する「非大蛇行接岸流路」と、伊豆諸島近海で南に小さく蛇行して八丈島の南を通過する「非大蛇行離岸流路」に分けられます。「大蛇行流路」を「黒潮大蛇行」と呼んでいます。 黒潮大蛇行を判定する基準として、以下の2つの条件を設定しています。
(1)潮岬で黒潮が離岸している(串本と浦神の潮位差が小さい値に安定していることで判定) (海水温・海流の知識:黒潮「串本と浦神の潮位差」参照)。
(2)東海沖(東経136〜140度)での黒潮流路の最南下点が北緯32度より安定して南に位置している (海水温・海流の知識:黒潮「黒潮大蛇行とは」参照)。
この基準によると、過去の黒潮大蛇行の期間は、以下のようになります。
- 1975年8月から1980年3月まで
- 1981年11月から1984年5月まで
- 1986年12月から1988年7月まで
- 1989年12月から1990年12月まで
- 2004年7月から2005年8月まで