平成30年2月28日発表
気象庁地球環境・海洋部
診断(2017年)
- 1970年代後半から1990年代初めまでは、黒潮大蛇行が頻繁に発生していました。それ以降は2004年7月~2005年8月を除き、非大蛇行の状態が続いていました。
- 2017年には、12年ぶりに黒潮大蛇行が発生しました。
上図:東海沖における黒潮流路の最南下緯度の経年変動(1961年1月~2017年12月) 東海沖における黒潮流路の月ごとの最南下緯度を細線で、13か月移動平均値を太線で示しています。オレンジ色は黒潮大蛇行の期間を表しています。東海沖(東経136度~140度)で黒潮が北緯32度より南まで南下した状態で安定していることが黒潮大蛇行の判定の目安になります(下記「黒潮大蛇行とその判定基準について」を参照)。 左図:黒潮の典型的流路(1:非大蛇行接岸流路 2:非大蛇行離岸流路 3:大蛇行流路) |
上図:串本と浦神の潮位差(串本の潮位から浦神の潮位を引いたもの)の経年変動(1961年1月~2017年12月) 串本と浦神の月ごとの潮位差を細線で、5か月移動平均値を太線で示しています。オレンジ色は黒潮大蛇行の期間を表しています。潮位差が小さい値に安定していることは潮岬で黒潮が離岸していることを示し、黒潮大蛇行を判定する目安になります(下記「黒潮大蛇行とその判定基準について」を参照)。 |
解説
長期変動
黒潮は、1960年代半ばから1970年代半ばまで、非大蛇行の状態でした。それ以降1990年代初めまでは黒潮大蛇行が頻繁に発生していました。その後、非大蛇行の状態が2004年前半まで続いていましたが、2004年7月~2005年8月に大蛇行が発生しました。その後再び非大蛇行の状態が続いていましたが、2017年8月に大蛇行が発生しました。
2017年
2017年3月下旬に九州南東方で発生した小蛇行※が、5月から6月にかけてと8月の2回に分かれて潮岬の南を東進し、8月下旬以降、黒潮は東海沖で大きく離岸して流れるようになり、12年ぶりに黒潮大蛇行が発生しました。
2017年の黒潮は、潮岬では5月上旬までは接岸して流れ、5月中旬から6月前半にかけて離岸し、その後7月下旬まで接岸しましたが、8月以降は離岸した状態が続きました。 東海沖では、4月まで北緯32度以北を流れていました。5月上・中旬と7月には北緯32度より南まで南下し、その後一時的に北緯32度以北を流れましたが、8月下旬以降は北緯32度より南まで南下して流れていました。 伊豆諸島付近では、8月までは、1月上・中旬、3月上旬、6月上・中旬をのぞき、八丈島付近または八丈島の南を流れていました。9月以降は、11月上旬、12月中旬をのぞき、八丈島より北を流れていました。
なお、黒潮流路の短い周期の変動や最新の状況は、 日本近海の海流(月概況)をご覧ください。
※小蛇行:黒潮が九州の南東で沖に向かって大きく膨らんで流れ、流路と岸との間に冷水域を伴うとき、この現象を小蛇行と呼びます。九州南東方で発生した小蛇行が、数か月かけて東進した後、東海沖で発達して大蛇行を形成する場合のあることが知られています。
黒潮大蛇行とその判定基準について
本州南方を流れる黒潮の流路には、大きく分けて2種類の安定したパターンがあります。一方は、東海沖で南へ大きく蛇行して流れる 「大蛇行流路」、他方は、四国・本州南岸にほぼ沿って流れる「非大蛇行流路」と呼ばれているものです。 「非大蛇行流路」はさらに、東海沖をほぼ東に直進し八丈島の北を通過する「非大蛇行接岸流路」と、伊豆諸島近海で南に小さく蛇行して八丈島の南を通過する「非大蛇行離岸流路」に分けられます。「大蛇行流路」を「黒潮大蛇行」と呼んでいます。
黒潮大蛇行を判定する基準として、以下の2つの条件を設定しています。
(1)潮岬で黒潮が離岸している(串本と浦神の潮位差が小さい値に安定していることで判定) (海水温・海流の知識:黒潮「串本と浦神の潮位差」参照)。
(2)東海沖(東経136~140度)での黒潮流路の最南下点が北緯32度より安定して南に位置している (海水温・海流の知識:黒潮「黒潮大蛇行とは」参照)。
この基準によると、1965年以降の黒潮大蛇行の期間は、以下のようになります。
- 1975年8月から1980年3月まで
- 1981年11月から1984年5月まで
- 1986年12月から1988年7月まで
- 1989年12月から1990年12月まで
- 2004年7月から2005年8月まで
- 2017年8月から