親潮の数か月から十年規模の変動

令和6年2月29日 気象庁発表
(次回発表予定 令和7年2月28日)

診断(2023年)

・1980年代にしばしば発生した日本東方海域における親潮の顕著な南下※1は、1986年を最後に発生していません。
・2023年の親潮の面積は、平年より小さい状態だった11月を除き、平年よりかなり小さくなっていました。 2023年の春季の平均南限位置は北緯41.2度でした。
日本東方海域(北緯43度以南、東経148度以西)の親潮の春季(3~5月)の平均南限位置及び平均面積の年々変化

日本東方海域の親潮の春季(3~5月)の平均南限位置及び平均面積の年々変化(1971年から2023年まで)

赤線が平均南限位置(右軸=北緯(度))、青色部が平均面積(左軸=104km2)を示します。1982年以降は、海洋大循環モデルを用いて求めています。詳しくは、解説の「親潮の解析にあたって」をご参照ください。



日本東方海域(北緯43度以南、東経148度以西)における月ごとの親潮の面積の経年変動

日本東方海域(北緯43度以南、東経148度以西)における月ごとの親潮の面積の経年変動(1971年1月~2023年12月)

1982年以降は、海洋大循環モデルを用いて求めています。詳しくは、解説の「親潮の解析にあたって」をご参照ください。



日本東方海域(北緯43度以南、東経148度以西)における月ごとの親潮の南限位置の経年変動

日本東方海域(北緯43度以南、東経148度以西)における月ごとの親潮の南限位置の経年変動(1971年1月~2023年12月)



解説

 例年、親潮は春に大きく南に張り出し、夏から秋にかけてゆっくり北へ後退します。日本東方海域(北緯43度以南、東経148度以西)における親潮の沿岸寄りの分枝の顕著な南下※1は1981年、1984年、1986年と1980年代にしばしば発生しましたが、このような事例は1986年を最後に発生していません。

 2023年の親潮の面積は、平年より小さい状態だった11月を除き、平年よりかなり小さくなっていました。特に、6~8月、12月の各月の親潮の面積は、1982年以降※2の各月の中で、最小の値となりました。また、9月は2022年に次いで2番目に小さい値でした。 2023年の親潮の南限位置は、北緯41度以北の状態が続いていました。6月、8~9月は東経148度以東に後退していました。
 親潮の面積が平年よりかなり小さく、南限位置が北緯41度以北の状態が続いたのは、2023年の日本東方海域で暖水渦が存在したほか、春頃から黒潮続流が三陸沖まで北上した状態が続いていたことと関係していると考えられます。
 2023年春季(3~5月)の平均面積は7.2×104km2で、1982年以降の過去42年間で小さい方から数えて3番目でした。 春季の平均南限位置は北緯41.2度と、過去42年間で北から数えて第3位でした。


※1 顕著な南下とは

春季(3~5月)の平均南限位置が北緯38度よりも南にあり、かつ、春季の平均面積がある程度の広がりと持続性をもつ場合について総合的に判断し、顕著な南下としています。1978年、1981年、1984年及び1986年が該当します。

※2 親潮の解析にあたって

親潮の面積は、日本東方海域(北緯43度以南、東経148度以西)の深さ100mにおける水温5゚C以下の領域を親潮と定義して求めています。1981年までは観測データに基づいた客観解析値から求め、1982年以降は観測データに加え海洋大循環モデルを用いた解析値から求めています。後者はより細かい表現が可能な資料ですが、親潮の広がりの程度を診断するうえでは、二つのデータ間の差は十分に小さいことを確かめています。2020年の診断(2021年3月発表)より、1993年以降のデータは日本沿岸海況監視予測システムの解析値を使用しています(日本沿岸海況監視予測システムの導入について)。そのため、2019年の診断(2020年3月発表)以前の数値と異なります。
親潮の南限位置は、深さ100mの水温資料、衛星の海面水温画像等から、親潮の沿岸寄りの分枝に相当する冷水の張り出しを総合的に判断して決定しています。
なお、親潮の面積や南限位置の過去の順位は、海洋大循環モデルの結果が得られる1982年以降の資料で求めています。

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