海洋に蓄積された熱量の計算方法

海洋に蓄積された熱量

1kgの物体が蓄積している熱量は、その物体の比熱と温度の積で表すことができます。海洋学では、熱量そのものよりも熱の変化量が重要であるため、温度は参照値(通常は0℃)からの差として計算を行います。すなわち、1kgの海水が蓄積している熱量Q 〔J〕は比熱C 〔J/℃/kg〕、水温T 〔℃〕を使って以下の式で表されます。

Q = C × ( T - 0〔℃〕 )

さらに、海水の比熱や密度は水温・塩分・圧力によって変化し場所ごとに異なるため、海洋に蓄積された全熱量は、密度ρ〔kg/m3〕を使ってそれぞれの位置にある1m3ごとの海水が蓄積している熱量を以下の式を用いて求め、それを積算することで見積もります。

ρ × C × ( T - 0〔℃〕 )

海洋貯熱量の長期変化傾向の診断や関連するデータバンクでは、貯熱量や海水温の計算にIshii et al. (2017)の手法を用いています。

熱量と温度の関係 

海水に蓄積している熱量は、水温が高ければ大きく、低ければ小さくなります。この診断で扱っているような、時間的、空間的に大きな変動現象では、熱量の変化は平均水温の変化と対象海域の海水の体積にほぼ比例し、全球で海面から水深2000mまでの海水の温度が1℃上昇することは、およそ3 × 1024Jの熱が蓄積されたことに対応します。

参考文献

  • Ishii, M., Y. Fukuda, H. Hirahara, S. Yasui, T. Suzuki, and K. Sato, 2017: Accuracy of Global Upper Ocean Heat Content Estimation Expected from Present Observational Data Sets. SOLA, Vol. 13, 163-167, doi:10.2151/sola.2017-030.

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