黒潮の数か月から十年規模の変動(流量)
平成17年10月25日発表
気象庁地球環境・海洋部
診断(2004年)
本州南方の黒潮の流量は、近年では1996年ころに極小、2000年ころに極大になり、その後は2004年まで減少傾向でした。本州南方における黒潮流量の経年変動は、北太平洋中部における風応力の場の変動によって生じた海洋の内部構造の変動が3~5年 かけて西に伝わることで生じたものであると診断できます。
東経137度線を横切る冬季・夏季の黒潮の流量の経年変化(1972年冬季~2005年冬季)
夏季と冬季の気象庁海洋気象観測船の観測に基づく深さ約1250mを基準とした地衡流量を計算し、本州南方における東向き流量からその南側の西向き流量(黒潮反流)を再循環する量として差し引いた正味の東向きの値を黒潮の流量としています。細線は観測値、太線はその2年移動平均を表します。
解説
日本南方の黒潮流量は、1970年代半ばから1980年代始めにかけて大きく増加しました。1980年代以降は10年程度の周期変動が卓越しており、近年では1996年ころに極小、2000年ころに極大、その後は減少しています。
このような黒潮流量の経年変動は、北太平洋中央部(北緯25~35度、東経170度~西経170度)における風応力の回転の強さの変動と約3~5年遅れで相関が高くなっています。このことから、太平洋中部の風の変動によって生じた海洋の内部構造の変動がロスビー波によって約3~5年かけて太平洋西岸に伝わり、黒潮流量の経年変動をもたらしている、と診断できます。 なお、太平洋中央域の風応力の回転は2000年以降、負の偏差が大きく(すなわち、時計回りの向きの流れを引き起こす力が強く)なっています。