黒潮の数か月から十年規模の変動(流量)

平成30年5月21日発表

気象庁地球環境・海洋部

診断(2017年)

東経137度線を横切る黒潮流量は、近年では、2009年頃に極小、2012年頃に極大となり、その後2015年頃にかけて減少しました。
黒潮の流量

東経137度線を横切る冬季・夏季の黒潮の流量の経年変化(1967年冬季~2018年冬季)

夏季と冬季の気象庁海洋気象観測船の観測に基づく深さ約1250mを基準とした地衡流量を計算し、本州南方における東向き流量からその南側の西向き流量(黒潮反流)を再循環する量として差し引いた正味の東向きの値を黒潮の流量としています。細線は観測値、太線はその3年移動平均を表します。2009年夏季(図中'x')は、気象庁海洋気象観測船以外のデータも利用しています。詳細については「2009年夏季の東経137度線の解析」をご覧ください。
解析には、2017年の診断(2018年5月発表)より、2018年3月に公開した「東経137度定線の長期解析結果」を使用しています。そのため、2016年の診断(2017年5月発表)以前の数値と一部異なります。

解説

東経137度線を横切る日本南方の黒潮流量には、数年から10年程度の周期変動がみられます。近年では、2009年頃に極小、2012年頃に極大となり、その後2015年頃にかけて減少しました。このような黒潮流量の変動は、北太平洋中央部における風の分布や強さの変動が影響していると考えられます(参考: 黒潮の流量と北太平洋中央部の風)
黒潮は、大量の熱を熱帯から日本南方へ運び、冬季には本州東方で大気へ熱を放出しています。そのため、黒潮流量の変動は、日本周辺や北太平洋の気候にも影響を与えていると言われています。数値モデルを用いた将来予測では、地球温暖化によって、黒潮を含む西岸境界流は強化されるという予測が示されています(Yang et al., 2016)が、 東経137度の観測結果では、1990年代以降、減少傾向が続いています。将来予測に反するこの減少傾向が今後も続くものか、黒潮流量の監視を続けていく必要があります。

参考文献

  • Yang, H., G. Lohmann, W. Wei, M. Dima, M. Ionita, and J. Liu, 2016: Intensification and poleward shift of subtropical western boudary currents in a warming climate. J. Geophys. Res. Oceans, 121, 4928-4945.

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