黒潮続流域での冬季の海面冷却について

 黒潮続流域では、冬季に寒冷な季節風によって大気よりも温度の高い海面が冷却され、海面から大気へ大量の熱が放出されます。このためこの季節風の強さは、冬季の海面冷却の強さ(海洋から大気へ放出される熱の量)の変動要因のひとつとなっています。
季節風の強さの指標の一つに、イルクーツクと根室の気圧差で表されるモンスーンインデックスがあります。冬季にシベリア高気圧が優勢のとき、モンスーンインデックスは大きな値をとり、日本付近では北西の季節風が強い状態となります。モンスーンインデックスの時系列(図1)をみると、1990年前後や1990年代後半に小さくなっており、それに対応して、北太平洋亜熱帯モード水の形成域で大気に放出される熱の量(海面熱フラックス、図2)も小さくなっています。

冬季モンスーンインデックスの時系列図

モンスーンインデックスの模式図

図1 冬季のモンスーンインデックス (Hanawa et al., 1988) の時系列 (1971年~2019年)

 上図は時系列、下図はモンスーンインデックスの模式図(図中の実線は等圧線、矢印は冬季季節風に対応)をあらわします。なお冬季とは、12月から2月(例えば、2010年の場合、2009年12月から2010年2月)の平均を指します。冬季にイルクーツクと根室の気圧差が大きいと、日本付近における北西の季節風が強くなります。(冬季のモンスーンインデックス数値データ[TXT形式]

冬季の北太平洋亜熱帯モード水の形成域における熱フラックス

図2 北太平洋亜熱帯モード水形成域における海面熱フラックスの時系列(1970年~2018年)

 北太平洋亜熱帯モード水の形成域(図1の模式図の青枠内)での冬季の海面熱フラックス(海面を通過する単位時間・単位面積あたりの熱量で、下向きを正とする)をあらわします。なお熱フラックスは、JRA-55再解析データ(Kobayashi et al., 2015)を使用し、細線は毎年の値、太線は3年移動平均をあらわします。

参考文献

  • Hanawa, K., T. Watanabe, N. Iwasaka, T. Suga and Y. Toba, 1988: Surface Thermal Conditions in the Western North Pacific during the ENSO Events. J. Meteor. Soc. Japan, 66, 445-456.
  • Kobayashi, S., Y. Ota, Y. Harada, A. Ebita, M. Moriya, H. Onoda, K. Onogi, H. Kamahori, C. Kobayashi, H. Endo, K. Miyaoka, and K. Takahashi, 2015: The JRA-55 Reanalysis: General Specifications and Basic Characteristics. J. Meteor. Soc. Japan, 93(1), 5-48, doi:10.2151/jmsj.2015-001.

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