重金属(過去の診断)
平成19年1月31日 気象庁発表
診断(2006年)
- 水銀の濃度は房総半島沖で観測された 14ng/kgが最高ですが、この値は「水質汚濁に係る環境基準(昭和46年・環境庁告示第59号)」に示された公共用水域における環境基準値の30分の1に満たない低濃度です。
- カドミウムの濃度は北海道南方で観測された 79ng/kgが最高ですが、この値は上記の環境基準値の120分の1以下の低濃度です。
- 北西太平洋全般に、水銀、カドミウムとも自然界のバックグランドレベルにあるものとみられます。
- なお、海水中のカドミウム濃度はリン酸塩濃度と高い相関を示すことが知られており、その鉛直分布型も類似しています。北海道南方海域は、リン酸塩などの栄養塩に富む親潮域にあたるので、本州南方のように栄養塩に乏しい黒潮域に比べると、高濃度のカドミウムが検出されます。
海域 | 水銀 | カドミウム | ||
---|---|---|---|---|
日本周辺海域 | 北海道南方 | 0 - 2 | 9 - 79 | |
日本海 | 0 - 5 | 12 - 34 | ||
房総半島沖 | 0 - 14 | 2 - 15 | ||
本州南方 | 0 - 5 | 2 - 9 | ||
東シナ海 | 0 - 4 | 0 - 6 | ||
北西太平洋 | 東経137度線 北緯20~30度 |
2 - 6 | 1 - 4 | |
東経137度線 北緯0~20度 |
1 - 12 | 0 - 4 |
解説
(1) 調査海域と診断基準
2006年に観測された表面海水中の水銀およびカドミウムの濃度範囲を海域ごとに分けて表に示しました(日本周辺海域の区分は右図のとおりです)。時系列は示しませんが、1990年代後半以降、水銀、カドミウムとも、いずれの海域においても年平均値はほとんど変動していません。ここでは診断の基準として、「水質汚濁に係る環境基準(昭和46年・環境庁告示第59号)」に示された公共用水域における環境基準値を準用します。
(2) 観測結果
水銀濃度は房総半島沖で観測された 14ng/kg[ナノグラム毎キログラム]が最高値ですが、総水銀の基準値(0.0005 mg/l [ミリグラム毎リットル]以下)と比較すると、30分の1に満たない低レベルです。カドミウムの最高値は、栄養塩の豊富な親潮水が分布する北海道南方海域における 79 ng/kg でしたが、上記の環境基準値(0.01 mg/l 以下)と比較すれば120分の1以下の低濃度です。基準値を超える濃度の水銀およびカドミウムは観測されていません。
(3) 自然レベルの値との比較
外洋域における水銀およびカドミウムの濃度の自然レベルの値は、それぞれ0.4~2ng/kgおよび0.1~110ng/kgの範囲とされています。気象庁の観測値をこれらと比較すると、水銀はおおむね同レベルかわずかに高い値であり、カドミウムは示された範囲に収まっています。したがって、対象としたすべての海域で、水銀、カドミウムともほぼ自然界のバックグランドレベルにあるものと判断できます。
※ 海水1リットルの重さは1020~1030gの範囲にあり、ほぼ1kgとみなすことができます。また、ng [ナノグラム]は10億分の1グラム、mg [ミリグラム]は1,000分の1グラムです。したがって、0.001mg/l がほぼ 1,000ng/kg に相当し、水銀の環境基準値 0.0005 mg/l はほぼ 500ng/kg、カドミウムの環境基準値 0.01 mg/l はほぼ 10,000ng/kg となります。