浮遊タールボール・油分
令和2年2月28日 気象庁発表
診断(2019年)
- 2019年は、観測した全ての海域でタールボールは採取されませんでした。
- 日本周辺海域及び東経137度線における油分は、37及び18ng/kg クリセン換算量でした。
図中の“+(NIL)”はタールボールが採取されなかったことを示します。
* 2010年までは海洋気象台による観測データを用いて海域ごとの集計を行っていますが、2011年以降は図に示した観測点での集計に切り替わっています。
解説
気象庁では、海域面積 1m2 あたりの浮遊タールボールの重量を「タールボール密度」として診断を行っています。
2019年は、観測した全ての海域でタールボールは採取されませんでした。
浮遊タールボールは、1980年代の初めまでは、日本周辺海域及び東経137度線の北緯20~30度で多く採取されました。 特に1979年には、両海域での平均値が 0.6mg/m2 を上回っていました。 しかし、マルポール条約(マルポール73/78条約)の付属書I(油による汚染の防止のための規則)に基づいて 船舶からの油類の排出が規制された1983年以降、タールボール密度は大幅に減少しました。 日本周辺海域では、1978年から1982年の5年平均が 0.29mg/m2 であったのに対し、条約発効後の1984年から1988年の5年平均は 0.08mg/m2 になっています。 1984年以降タールボールが採取される頻度は減少傾向が続き、2000年代以降は、採取されるタールボールの密度は 0.01mg/m2 を下回る年が多くなりました。2009年以降は、ほぼ 0.001mg/m2 を下回る年が続いています。 東経137度線の北緯20~30度でも、1984年以降タールボールが採取される頻度は減少傾向が続き、密度も 0.01mg/m2 を下回る年が多くなりました。1990年代半ば以降は、 0.001mg/m2 を下回る年が多くなり、タールボールはまれにしか採取されていません。
油分については、海水 1kg あたりの石油系炭化水素重量をクリセン換算量で表して診断を行っています。
油分の海域平均値は、日本周辺海域及び東経137度線において、観測開始以来大きく変動しながら低下傾向が続き、2005年以降ほぼ 50ng/kg クリセン換算量以下の値なっています。2019年は、日本周辺海域で 37ng/kg クリセン換算量、東経137度線で 18ng/kg クリセン換算量でした。油分は年ごとに大きく変動していますが、長期的にみて低下していることは、油類の排出規制の効果であると考えられます。