海氷域面積の長期変化傾向(北極域)

平成24年10月19日発表
気象庁地球環境・海洋部

診断(2012年)

北極域の海氷域面積は、1979年以降、長期的に見ると減少傾向を示しており、特に年最小値において減少傾向が顕著で、近年は減少率が大きくなる傾向にあります。
 なお、2012年の海氷域面積の年最小値は、観測史上最小の342万平方キロメートルとなりました。

北極域の海氷域面積の年最小値の経年変化(1979年~2012年)
北極域の海氷域面積の年最小値の経年変化(1979年~2012年)
青色の折れ線は北極域年最小値の海氷域面積の経年変化を示す。点線は変化傾向。


解説

2012年の北極域の海氷域面積の経過

北極域の海氷域面積は例年3月初め頃から減少に転じます。 2012年は3月5日に年最大値(1548万平方キロメートル)となり、年最大値としてはほぼ平年並でした。これ以降、海氷域面積は減少に転じ、5月末まではほぼ平年並のペースで減少しました。しかし6月上旬に海氷域面積が急速に減少し、6月中旬以降は過去最小かそれに近い海氷域面積で経過しました。例年は8月に入ると海氷域面積の減少速度が鈍りますが、2012年は8月を通じて海氷域面積の急速な減少が続きました。8月19日には、これまでの最小だった2007年の記録(431万平方キロメートル)を下回り、9月13日に海氷域面積は観測史上最小の342万平方キロメートルとなりました(参照:臨時診断表 2012年夏季の北極域の海氷域面積)。その後、海氷域面積は増加に転じ、10月10日現在約500万平方キロメートルまで拡大しました(図:北極域の海氷域面積の推移)。

海氷域面積の長期変化傾向の最近の特徴と要因

海氷域面積の年最小値は2007年に大きく減少し、それ以降の年最小値はいずれの年も2006年以前よりも小さくなっています。1979年から2012年までの年最小値の減少率は9.3[7.4~11.3]万平方キロメートル/年で、近年は減少率が大きくなる傾向にあります([ ]中の数字は95%の信頼区間を示す)。
  海氷域面積の年最小値の減少率が近年大きくなっている要因の一つとして、海氷が融解することで海面が増えた分、太陽放射をより吸収し、更に海氷の融解をもたらす正のフィードバック効果が働いている可能性があり、海氷がより融解しやすい状態になっているものと考えられます。また、海氷域面積を減少させる要因には気象や海洋の状況、河川水の流入、海氷の厚さなども複雑に影響を及ぼし合っており、それぞれの要因がどのように影響しているのか、各機関で研究が進められています。


備考

この「海氷域面積の長期変化傾向(北極域)」の診断は、NSIDC(アメリカ雪氷データセンター)提供の観測データを用いており、2011年4月1日以降はその速報値を用いて解析しています。観測や解析の方法については、北極域と南極域の海氷解析の解説を参照して下さい。

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