海氷域面積の長期変化傾向(全球)

平成17年10月25日発表

気象庁地球環境・海洋部

診断(2004年)

 海氷域面積は、北極域は明らかな減少傾向にあります。夏の極小値(海氷域が1年で最も縮小した時期の面積)は2002年に、冬の極大値(海氷域が1年で最も拡大した時期の面積)は2004、2005年と2年連続で、1978年の観測開始以来の最小値を更新しました。
 南極域は近年わずかな増加傾向がみられますが、長期傾向として増加しているといえるものではありません。全球では北極域の減少の影響が大きく、減少傾向になっています。2005年には北極域の冬の極大値が最小となった影響で、全球の海氷域面積の年最小値が1978年の観測開始以来の最小値となりました。
全球海氷域面積偏差経年変化図

北極域と南極域、および全球(北極域+南極域)の海氷域面積の規格化された偏差(平年差/標準偏差)の経年変化(1978~2005年3月)
縦軸は、半月毎の海氷域面積の平年からの偏差を、標準偏差で割ったもの。青線は3年移動平均値を示す。

解説

観測事実
 北極域の海氷域面積には、明らかな減少傾向がみられます。2002年には夏の極小値(海氷域が1年で最も縮小した時期の面積)が、2004、2005年には2年連続して冬の極大値(海氷域が1年で最も拡大した時期の面積)が、1978年の観測開始以来の最小値を更新しました。夏季の面積の減少する割合の方が、冬季の面積の縮小する割合よりも大きくなっています。
南極域の海氷域面積は1990年代初頭からわずかな増加傾向がみられますが、その大きさは小さく、長期傾向として増加傾向にあるとは言い切れません。全球の海氷域面積は北極域の減少の影響により減少傾向になっています。2005年には北極域の冬の極大値が最小となった影響で、全球の海氷域面積の年最小値が1978年の観測開始以来の最小値となりました。

研究成果の概要
 IPCC,2001によれば、北極域の春・夏の海氷面積の縮小は気温の上昇と良い対応を示しているが、気温上昇に比して冬期の海氷面積の縮小が小さいこと、南極域では気温の上昇量が北極域に比べて小さいこと、気温の変化と海氷面積の変化の間に明確な関係は見出されないことなどが示されています。海氷域の変動は気温・水温・降水量・大気の流れなどの影響を受けるため、全球の気温の上昇と海氷域の減少を単純に結びつけることは出来ません。

気候モデルによるシミュレーション
 気候モデルによる数値シミュレーションをみても、温暖化の進行に伴い北極域の海氷はほぼ一貫して縮小するが、南極域の海氷は一時的に増加するという結果が出ています。現在までの経過は数値シミュレーションの結果と矛盾するものではありません。

まとめ
 衛星による海氷観測資料の蓄積は、ほかの気候要素に比べまだ短期間であり、解析結果にみられる傾向が、地球温暖化によるものなのか、自然界の中・長期変動に対応するものなのかはまだ明らかではない、というのが国際的な共通認識となっています。数値シミュレーションでは将来的(21世紀後半以降)には南極域の海氷も減少する予想であり、温暖化の影響の解明には更なる監視の強化や研究の促進が必要です。 

このページのトップへ