海氷域面積の長期変化傾向(全球)
平成18年8月31日発表
気象庁地球環境・海洋部
診断(2005年)
北極域の海氷域面積は明らかな減少傾向にあります。2005年には、冬の年最大値(海氷域が1年で最も拡大した時期の面積)が1465万9500平方km、夏の年最小値(海氷域が1年で最も縮小した時期の面積)が533万300平方kmとなり、ともに1979年の統計開始以来の最小値を記録しました。南極域の海氷域面積は、近年わずかな増加傾向がみられますが、長期傾向として増加しているといえるものではありません。
全球では北極域の減少の影響が大きく、減少傾向になっています。2005年には、北極域の冬の年最大値が最小となった影響で、全球の海氷域面積の年最小値が1718万4700平方kmで、1978年11月の観測開始以来の最小値となりました。
北極域、南極域、全球(北極域+南極域)の海氷域面積の規格化された偏差(平年差/標準偏差)の経年変化(1978年11月~2005年12月)
縦軸は、半月毎の海氷域面積の平年からの偏差を、標準偏差で割ったもの。青線は3年移動平均値を示す。
解説
観測事実
北極域の海氷域面積には明らかな減少傾向がみられます。冬の年最大値(海氷域が1年で最も拡大した時期の面積)は2004年、2005年と2年連続で、夏の年最小値(海氷域が1年で最も縮小した時期の面積)は2005年、1979年の統計開始以来の最小値を更新しました。夏季の面積の減少する割合の方が冬季の面積の縮小する割合より大きくなっています。南極域の海氷域面積は1990年代初頭からわずかな増加傾向がみられますが、その大きさは小さく長期傾向として増加傾向にあるとは言い切れません。
全球の海氷域面積は北極域の減少の影響により減少傾向になっています。2005年には北極域の冬の年最大値が最小となった影響で、全球の海氷域面積の年最小値が1978年11月の観測開始以来の最小値となりました。
研究成果の概要
気候モデルによる数値シミュレーションでは、温暖化の進行に伴い北極域の海氷はほぼ一貫して縮小するが、南極域の海氷は一時的に増加するという結果が出ています。現在までの経過は、数値シミュレーションの結果と矛盾するものではありません。
衛星による海氷観測資料の蓄積は、ほかの気候要素に比べまだ短期間であり、解析結果にみられる傾向が、地球温暖化によるものなのか、自然界の中・長期変動に対応するものなのかはまだ明らかではありません。数値シミュレーションでは将来的には南極域の海氷も減少する予想であり、温暖化の影響の解明には更なる監視の強化や研究の促進が必要です。