海氷域面積の長期変化傾向(全球)

平成20年9月1日発表

気象庁地球環境・海洋部

診断(2007年)

北極の海氷域面積は、1979年以降、長期的に見ると減少傾向を示しています。 特に海氷域面積が1年間で最も小さくなる夏季においてその減少が顕著で、2007年までの減少率は 7.8[5.7~9.9] 万km2/年となりました(角括弧中の数字は95%の信頼区間を示す)。 また、海氷域面積が1年間で最も大きくなる冬季の面積の2007年までの減少率は 5.4[4.1~6.6] 万km2/年でした。2007年には、夏季の海氷域面積の年最小値が 420万700km2 と1979年以降の最小値を記録し、冬季の海氷域面積の年最大値は2006年に次いで2番目に小さい記録となりました。
一方、南極の海氷域面積は、1990年代以降わずかながら増加傾向を示していますが、明瞭な変化とは言えません。

北極域の海氷域面積の年最大値の経年変化(1979年~2007年)

北極域の海氷域面積の年最大値の経年変化(1979年~2007年)

北極域の海氷域面積の年最小値の経年変化(1979年~2007年)

北極域の海氷域面積の年最小値の経年変化(1979年~2007年)

青色の折れ線は北極域の海氷域面積の年最大値と年最小値の経年変化を示す。赤色の直線は各々の変化傾向。



北極海氷域面積偏差経年変化図
南極海氷域面積偏差経年変化図
全球海氷域面積偏差経年変化図

北極域、南極域および全球の海氷域面積の平年差の推移(1978年11月~2007年12月)

赤線は半月ごとの海氷域面積の平年差を標準偏差で割った(規格化した)値で、青線はその3年移動平均。平年値は1979~2000年の22年平均値。海氷は季節による変動が大きく、北極域、南極域および全球の比較を見やすくするために海氷域面積の平年差を標準偏差で割っている。

解説

北極の海氷域面積は、1979年以降、長期的に見ると減少傾向を示しています。特に、海氷域面積が1年間で最も小さくなる夏季において、その減少が顕著です。2007年は、海氷域面積の年最小値が1979年以降の最小となり、海氷域面積の年最大値も2006年についで2番目に小さい記録となりました。
南極の海氷域面積は1990年代初頭からわずかながら増加していますが、その変化量は小さく、明瞭な変化とはいえません。
衛星による海氷観測資料が蓄積された期間はここ30年ほどに過ぎません。その期間において北極の海氷域が減少していることは事実ですが、人為起源の地球温暖化をどのように反映したものなのか、研究が続けられています。

2007年2月に公表された気候変動に関する政府間パネル(IPCC)第4次評価報告書第1作業部会報告書の政策決定者向け要約では、海氷に関して以下のような見解が示されています。

  • 1978 年からの衛星観測によれば、北極の年平均海氷域面積は、10年当たり2.7[2.1~3.3]%縮小した(角括弧中の数字は90%の信頼区間を示す)。特に夏季の縮小は10年当たり7.4[5.0~9.8]%と大きい。これらの値は、第3次評価報告書で示されたものと整合している。
  • 南極の海氷域面積には、年々変動と局地的な変化が継続して見られるものの、統計学的に有意な変化傾向は見られない。これはこの地域全体で平均すると昇温が認められないことと整合している。
  • 北極及び南極の海氷は、すべての温室効果ガスの排出シナリオにおいて、縮小すると予測されている。北極海の晩夏における海氷は、21世紀後半までにほぼ完全に消滅するとの予測もある。

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