海氷域面積の長期変化傾向(全球)
平成23年1月31日発表
気象庁地球環境・海洋部
診断(2010年)
北極域の海氷域面積は、1979年以降、長期的に見ると減少傾向を示しています。特に、年最小値は減少傾向が顕著で、1979年から2010年までの減少率が8.1万平方キロメートル/年となりました。また、海氷域面積の年平均値は、2010年までの減少率が5.5万平方キロメートル/年でした。2010年の海氷域面積の年最小値は474万平方キロメートルで、2007年、2008年についで3番目に小さい記録となりました。
一方、南極域における海氷域面積の年平均値は、2010年までの変化率が2.9万平方キロメートル/年と増加傾向を示しています。
北極域の海氷域面積の年最小値の経年変化(1979年~2010年)
北極域の海氷域面積の年平均値の経年変化(1979年~2010年)
南極域の海氷域面積の年平均値の経年変化(1979年~2010年)
青色の折れ線は海氷域面積の経年変化を示す(上から順に、北極域年最小値、北極域年平均値、南極域年平均値)。点線は各々の長期変化傾向。
解説
北極域の海氷域面積は、1979年以降、長期的に見ると減少傾向を示しています。 特に、年最小値は減少傾向が顕著で、1979年から2010年までの減少率が 8.1 [6.3~10.0] 万平方キロメートル/年となりました(角括弧中の数字は95%の信頼区間を示す)。 また、海氷域面積の年平均値は、2010年までの減少率が 5.5 [4.6~6.3] 万平方キロメートル/年でした。2010年の海氷域面積の年最小値は474万平方キロメートルで、2007年、2008年に次いで3番目に小さい記録となりました。
一方、南極域における海氷域面積の年平均値は、2010年までの変化率が2.9 [2.1~3.8] 万平方キロメートル/年と増加傾向を示しています。2007年に公表された気候変動に関する政府間パネル(IPCC)第4次評価報告書第1作業部会報告書では、海氷に関して以下のような見解が示されています。
- 1978 年からの衛星観測によれば、北極の年平均海氷域面積は、10年当たり2.7 [2.1~3.3] %縮小した(角括弧中の数字は90%の信頼区間を示す)。特に夏季の縮小は10年当たり7.4 [5.0~9.8] %と大きい。
- 人為起源の放射強制力が北極海氷域面積の最近の減少に寄与した可能性が高い。
- 南極の海氷域面積には、年々変動と局地的な変化が継続して見られるものの、統計学的に有意な変化傾向は見られない。これはこの地域全体で平均すると昇温が認められないことと整合している。
- 北極及び南極の海氷は、すべての温室効果ガスの排出シナリオにおいて、縮小すると予測されている。北極海の晩夏における海氷は、21世紀後半までにほぼ完全に消滅するとの予測もある。
海氷データについて
この診断「海氷域面積の長期変化傾向(全球)」は新しいデータセットを用いており、平成22年10月20日より前に発表した資料とは値が異なります。また、2009年4月30日以降はNSIDC提供の速報値を用いて解析しています。