海氷域面積の長期変化傾向(オホーツク海)

平成19年9月3日発表

気象庁地球環境・海洋部

診断(2007年)

 オホーツク海の海氷域面積は年毎に大きく変動していますが、長期的には緩やかに減少しています。 海氷域が最も拡大した時期の面積は、10年あたり5.52万km2の減少となっています。この値はオホーツク海の全面積の3.5%に相当します。

オホーツク海の海氷域面積の経年変化(1971~2007年)

オホーツク海の海氷域面積の経年変化(1971~2007年)

解説

長期変化傾向

オホーツク海の海氷域面積

 1970年代になってから人工衛星による観測が可能となり、オホーツク海の海氷域面積の変化が捉えられるようになりました。 1990年代は海氷域面積が少ない時期が続きましたが、2001年にはオホーツク海のほぼ全域が海氷に覆われるほど広がりました。 その後再び減少傾向となり、2006年は、積算海氷域面積が1971年の統計開始以降では過去最小、海氷域が最も拡大した時期の面積(最大海氷域面積)も2番目に小さい記録となりました。 このようにオホーツク海の海氷域面積は年毎に大きく変動していますが、長期的に見ると、最大海氷域面積と積算海氷域面積は、 それぞれ10年あたり5.52[0.64~10.40]万km2、150.5[13.51~287.46]万km2の緩やかな減少傾向を示しています(注:大括弧[ ]内に示した数値は、解析の誤差範囲を表す)。 この減少傾向は危険率5%で統計的に有意です。
 オホーツク海の海氷域面積が大きくなる要因としては、 (1)結氷開始時期にオホーツク海北西岸の気温が低く、結氷開始時期の海氷域面積が大きいこと、 (2)北西風によって沿岸の海氷生成域の気温が低下し、生成した海氷が次々とオホーツク海中央部に流されることなどが考えられます(山崎,2000)。
 衛星による海氷観測資料が蓄積された期間はここ30年ほどに過ぎません。その期間においてオホーツク海の海氷域が緩やかな減少傾向を示していることは事実ですが、 それがどの程度人為起源の地球温暖化を反映した変動なのか、研究が進められています。

北海道沿岸の流氷

 気象庁で行っている沿岸流氷観測によると、流氷が観測されなかった海氷期は、1946年から2007年までの期間において、稚内で16回、根室で3回あります。 稚内の場合16回のうち12回が1989年以降、根室の場合3回すべてが1990年以降に起きており、近年、北海道沿岸から海氷の観測されない年が増えていることがわかります。 また、62年間毎冬流氷が観測されている網走の観測によれば、長期的に見ると、流氷初日が遅く、流氷終日は早くなる傾向があり、流氷が沿岸から観測される期間が短くなりつつあることが示されています(金子,2007)。 これらの結果は、近年、北海道沿岸において以前よりも流氷が広がらなくなってきたことを示唆しています。


2006/2007年海氷期の状況

オホーツク海全体の状況

 2006年12月から2007年5月におけるオホーツク海の5日ごとの海氷域面積は、2月までは平年並あるいは平年より小さい状態で経過しました。 3月5日に最大(107.28万km2)になった後急激に減少し、3月中旬としては過去最小の水準に近い状態になりました。 その後、3月末にかけて一時的に拡大しましたが、4月以降、北部の海氷域は平年より早く減少しました。3月以降オホーツク海北部では月平均の地上気温が平年より2度から3度高く、 このことが海氷の融解を進ませた要因の一つと推定されます。

北海道沿岸の流氷の状況

 紋別と網走の流氷初日は、ほぼ平年並でしたが、流氷接岸初日は平年より遅く、紋別で3月2日(平年より25日遅い)、網走で2月16日(平年より15日遅い)でした。 また、紋別では流氷終日が3月24日と平年より12日早く、流氷期間も平年より16日短い58日でした。 なお、稚内、根室、釧路では流氷が観測されませんでした。


備考

  • 前年12月5日から5月31日までの期間において、5日ごとに海氷域面積を合計した値を「積算海氷域面積」と呼んでいます。その海氷期のオホーツク海の海氷の勢力をあらわす指標として用います。
  • 気象庁では、人工衛星等の観測資料をもとに、オホーツク海、日本海および渤海周辺、北極域と南極域の海氷域の解析および海氷域面積の計算を、オホーツク海で海氷が生成し始める時期から完全に消滅するまで、半旬(毎月5日、10日、15日、20日、25日および月末)ごとに行っています。 また、12月から翌年5月まで、「オホーツク海の海氷分布(実況)」を毎週火曜日と金曜日に発表しています。この情報は、船舶向けの無線FAXでも放送されています。

参考文献

  • 山崎孝治, 2000: オホーツク海の海氷面積と冬の大気循環の相互作用, 雪氷, 62, 345-354.
  • 金子秀毅, 2007: 海氷域の解析とその変動の特徴, 気象研究ノート, 214, 75-92.

このページのトップへ