気候変動と海氷
海氷は地球温暖化のセンサー
海氷は海水面に比べ太陽光の反射率が大きいため、海氷が拡がっていると、地球が太陽のエネルギーを吸収して昇温する割合が小さくなります。また、海水温は凍らない限り-2度以下にはなりませんが、海氷が海面を覆うと海水から大気への熱輸送が遮断されます。この二つの特徴から、気温が上がり海氷が融解すると、太陽熱の吸収率が上がり、海水から大気への熱輸送も増加して、ますます気温が上昇するというフィードバック効果が生まれます。つまり、海氷はわずかな気温変化に対しても大きく変動する高感度なセンサーといえます。
海氷が陸氷の海洋への流出を抑制する
海氷が無くなると陸地の氷河の海洋への流出量が多くなると考えられます。これは海面上昇につながります。
海洋循環への影響
海水は凍るときに塩分を排出します(多少の塩分は海氷中に閉じ込められて残りますが)。極周辺の海氷の生成域では高塩分・低温の非常に密度の大きい海水が大規模に作られ沈降します。この流れが深層の海流の駆動力の一つと考えられています。深層の循環は非常にゆっくりとしたものですが、地球全体の気温のバランスを保つ上で重要な役割を果たしていると考えられています。
まだまだ未解明な部分も多い
温暖化により地球全体として気温が上昇していること、北極域の海氷が減少していることなどは観測で確かめられています。しかし、南極域の海氷面積は緩やかに増加しており、北極域でも全ての海域で海氷面積が減少しているわけではありません。温暖化と海氷域の減少を単純に結びつけることは出来ません。
温暖化は大気や海流の大きな流れにも影響を与えるため、風により海氷が今までよりも拡がったり、場所によっては寒冷化するといったことも、一部の数値シミュレーション結果には現れています。
人工衛星による海氷の観測は歴史が浅く、資料の蓄積がまだ十分とはいえません。海氷の平面的な拡がりは観測できるようになりましたが、海氷の厚さの観測はまだ研究段階ということもあり、海氷の総量の観測はほとんど行われていません。