日本沿岸の海面水位の長期変化傾向

平成26年2月10日発表

気象庁地球環境・海洋部

診断(2013年)

ここ100年の日本沿岸の海面水位には、世界平均の海面水位にみられるような明瞭な上昇傾向はみられません。1950年ころに極大がみられ、1990年代までは約20年周期の変動が顕著です。また1990年代以降は上昇傾向と共に約10年周期の変動が確認できます。
海面水位変動図

日本沿岸の海面水位変化(1906~2013年)
1981年~2010年の平均を0としています

検潮所地図1 検潮所地図2

日本沿岸で地盤変動の影響が小さい検潮所を選択しています。1906年から1959年までは4地点(左図)、1960年以降は16地点(右図)の検潮所を選択しています。1906年から1959年までは、地点毎に求めた年平均海面水位の平年差を4地点で平均した値の推移を示しています。
1960年以降については、日本周辺をⅠ:北海道・東北地方の沿岸、Ⅱ:関東・東海地方沿岸、Ⅲ:近畿~九州地方の太平洋側沿岸、Ⅳ:北陸~九州地方東シナ海側沿岸の4海域に分類(右図)し、海域毎に求めた年平均海面水位の平年差の平均値の推移を示しています。グラフは、1981年から2010年までの期間で求めた平年値を基準としています。青実線は4地点平均の平年差の5年移動平均値、赤実線は4海域平均の平年差の5年移動平均値を示します。青破線は4地点平均の平年差の5年移動平均値を後半の期間について求めた値で、参考として示しています。
忍路、柏崎、輪島、細島は国土地理院の所管です。
東京は1968年以降のデータを使用しています。
平成23年(2011年)東北地方太平洋沖地震の影響を受けた可能性のある函館、深浦、柏崎、東京は、2011年~2013年のデータから除外しています。
八戸は、検潮所が流失したため欠測としています。

データの見直し等により、年あたりの上昇率および数値データが変更される場合があります。

解説

ここ100年の日本沿岸の海面水位には、世界平均の海面水位にみられるような明瞭な上昇傾向はみられません。1950年ころに極大がみられ、1990年代までは約20年周期の変動が顕著です。また1990年代以降は上昇傾向と共に約10年周期の変動が確認できます。2013年の日本沿岸の海面水位は平年値(1981~2010年平均)と比べて58mm高く、1960年以降で第3位に相当します。
また、1960年から2013年までの海面水位の変化を海域別に見た場合、北陸~九州の東シナ海側で他の海域に比べて大きな上昇傾向がみられます。
約20年周期の変動については、主に北太平洋の偏西風の強弱や南北移動を原因としていることが数値モデルを用いた解析により明らかになっています。また、地盤変動の影響を除いた海面水位の変化と表層水温の変化には良い対応がみられ、特に南西諸島で良く一致しています。
2013年9月27日に公表された、気候変動に関する政府間パネル(IPCC:Intergovernmental Panel on Climate Change)IPCC第5次評価報告書第1作業部会報告書では「世界平均海面水位の平均上昇率は、1901~2010年の期間で1年当たり1.7[1.5~1.9]mm、1971年~2010年の期間で1年当たり2.0[1.7~2.3]mm、1993~2010年の期間で1年当たり3.2[2.8~3.6]mmであった可能性が非常に高い。」と結論づけられています。上記のIPCC第5次評価報告書と同じ期間で日本沿岸の海面水位の変化を求めると、20世紀には有意な上昇を示しませんでした。1971年から2010年にかけては年あたり1.1[0.6~1.6]mmの割合で上昇し、1993年から2010年にかけては年あたり2.8[1.3~4.3]mmの割合で上昇しました。

ここで、大括弧[ ]内に示した数値は、解析の誤差を考慮した見積もりを表します。

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