海面水位の変動要因
IPCC第6次評価報告書第1作業部会報告書(2021)では、海面水位上昇に大きな影響を与える要因として
- 海洋の熱膨張
- 氷河の変化
- グリーンランドの氷床と周囲の氷河の変化
- 南極の氷床と周囲の氷河の変化
- 陸域の貯水量の変化
を挙げ、それぞれの影響の大きさを評価しています。それぞれの要因の、観測された海面水位の上昇に対する寄与は、下表のように見積もられています。
上昇率(mm/年) | |||||
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要因 | 1901年~1990年 | 1971年~2018年 | 1993年~2018年 | 2006年~2018年 | 1901年~2018年 |
海洋の熱膨張 | 0.36 [0.17~0.54] | 1.01 [0.73~1.29] | 1.31 [0.95~1.66] | 1.39 [0.74~2.05] | 0.54 [0.40~0.68] |
氷河の変化(グリーンランドと南極の氷河を除く) | 0.58 [0.34~0.82] | 0.44 [0.21~0.67] | 0.55 [0.40~0.70] | 0.62 [0.57~0.68] | 0.57 [0.36~0.79] |
グリーンランドの氷床と周囲の氷河の変化 | 0.33 [0.18~0.47] | 0.25 [0.16~0.34] | 0.44 [0.36~0.51] | 0.91 [0.79~1.02] | 0.35 [0.23~0.46] |
南極の氷床と周囲の氷河の変化 | 0.00 [-0.10~0.11] | 0.14 [-0.08~0.37] | 0.26 [0.17~0.34] | 0.53 [0.40~0.66] | 0.06 [-0.03~0.15] |
陸域の貯水量の変化 | -0.15 [-0.35~0.04] | 0.15 [-0.05~0.36] | 0.31 [0.13~0.49] | 0.60 [0.32~0.88] | -0.11 [-0.39~0.17] |
合計 | 1.11 [0.71~1.52] | 2.01 [1.52~2.49] | 2.86 [2.42~3.30] | 4.06 [3.32~4.79] | 1.41 [1.00~1.82] |
観測 | 1.35 [0.78~1.92] | 2.33 [1.55~3.12] | 3.25 [2.88~3.61] | 3.69 [3.21~4.17] | 1.73 [1.28~2.17] |
※グリーンランドの氷河の変化による寄与は、グリーンランドの氷床の変化による寄与の見積もりに含まれているため、合計には含まれていません。
IPCC第6次評価報告書第1作業部会報告書(2021)より作成。ここで、角括弧の範囲は「可能性が非常に高い範囲(90~100%)」を示します。
1971〜2018年に観測された海面水位上昇の50%が、海洋の熱膨張で説明される一方、22%は氷河からの氷の減少、20%は氷床からの氷の消失、8%は陸域における貯水量の変化が寄与しました。少なくとも1971年以降に観測された世界平均海面水位の上昇の主要因は、人間の影響であった可能性が非常に高いです。
【更新のお知らせ】
- IPCC第6次評価報告書第1作業部会報告書(2021)の内容に修正しました(2022年2月15日)
参考文献
- IPCC, 2021: Chapter 9: Ocean, cryosphere and sea level change. In: Climate Change 2021: The Physical Science Basis. Contribution of Working Group I to the Sixth Assessment Report of the Intergovernmental Panel on Climate Change [Masson-Delmotte, V., P. Zhai, A. Pirani, S. L. Connors, C. Pean, S. Berger, N. Caud, Y. Chen, L. Goldfarb, M. I. Gomis, M. Huang, K. Leitzell, E. Lonnoy, J.B.R. Matthews, T. K. Maycock, T. Waterfield, O. Yelekci, R. Yu and B. Zhou (eds.)]. Cambridge University Press. In Press.