北西太平洋の水温・塩分の特徴
北西太平洋の東経137度線に沿った平均的な水温・塩分分布の模式図を以下に示します。水温を等値線、塩分を色(塩分が高いほど赤く、低いほど青い)で表しています。主な特徴を以下に示します。
- (1) 日本南岸の沖合いの海洋内部には、北から南に向けて急激に水温が上昇している部分があります。この水温の変化は黒潮の流れに対応したもので、水温・塩分から海水の密度分布を計算することで黒潮の流速や黒潮の運ぶ水の量を知ることができます。一般に、等値線の変化(傾き)が急であるほど強い流れを表します。(→黒潮については「海水温・海流の知識 黒潮」のページに詳しい解説があります)
- (2),(3) 黒潮の南から熱帯域にかけては、海水の蒸発が盛んなため海面付近の塩分が高くなっています。特に表面より少し深いところで塩分が最も高くなっていますが、これは蒸発がより盛んな東の海域でできた塩分の高い海水が流入しているためです。更に南の海域では海面の蒸発と比べて降水が多いため、海面付近の塩分が低くなっています。この塩分の変動によって、海面における降水-蒸発の変化や海洋の循環の強さの変化を知ることができます。
- (4) 熱帯域では深い部分の冷たい海水が浅い部分へ上昇する湧昇が起こっており、他の海域に比べて深さ数100mにおける水温が低くなっています。この海域における28℃を目安とした海面付近の暖かい水の厚みは、エルニーニョ現象が発生すると薄くなり、ラニーニャ現象が発生すると厚くなります。(→エルニーニョ現象については「エルニーニョ/ラニーニャ現象」のページに詳しい解説があります。)
- (5) 中緯度域の水深800mを中心とした中層には周囲よりも塩分の低い海水があります。これは本州東方で低温低塩分である親潮と黒潮が表層で混合し、その結果海洋内部に沈みこんだ海水が輸送されてきたものと考えられています。この塩分分布の変化から、海洋内部の輸送状態を知ることができます。
東経137度線に沿った平均的な水温・塩分の分布
等値線は水温, 色は塩分(高いほど赤く, 低いほど青い)を表す