海氷域面積の長期変化傾向(北極域)

平成26年10月20日発表
気象庁地球環境・海洋部

診断(2014年)

北極域の海氷域面積は、1979年以降、長期的に見ると減少傾向を示しています。特に、年最小値において減少傾向が顕著です。

2014年の年最小値は519万平方キロメートル(速報値)で、1979年以降では8番目に小さな値でした。

北極域の海氷域面積の年最小値の経年変化(1979年~2014年)
北極域の海氷域面積の年最小値の経年変化(1979年~2014年)
破線は変化傾向を示す。


解説

海氷域面積の長期変化傾向の特徴と要因

北極域の海氷域面積は、1979年以降、長期的に見ると減少傾向を示しており、特に年最小値において減少傾向が顕著です。海氷域面積の年最小値は2007年に大きく減少し、それ以降の年最小値はいずれの年も2006年以前よりも小さくなっています。1979年から2014年までの減少率8.9[7.1~10.7]万平方キロメートル/年は、年最小値が過去最小だった2012年までの減少率9.3[7.4~11.3]万平方キロメートル/年と比べわずかに小さくなっています(角括弧中の数字は95%の信頼区間を示す)。これは、2013年と2014年の海氷域面積が2007年以降では比較的大きかったためです。

海氷域面積の年最小値が減少傾向を示している要因の一つとして、海氷が融解することで海面が増えた分、太陽放射をより吸収し、更に海氷の融解をもたらす正のフィードバック効果が働いている可能性があり、海氷がより融解しやすい状態になっているものと考えられます。また、海氷域面積を減少させる要因には気象や海洋の状況、河川水の流入、海氷の厚さなども複雑に影響を及ぼし合っており、それぞれの要因がどのように影響しているのか、各機関で研究が進められています。

2014年の北極域の海氷域面積の経過

北極域の海氷域面積は、例年3月初め頃年最大となり、その後減少に転じます。2014年は3月18日に年最大値(1519万平方キロメートル)となり、年最大値としては平年より小さい値でした。その後海氷域面積は減少に転じ、平年より小さい状態が続きました。海氷域面積の減少速度は、6月に一時的に平年より大きくなった以外はほぼ平年並で、9月17日に年最小の519万平方キロメートル(速報値)となりました。その後、海氷域面積は増加に転じています(図:北極域の海氷域面積の推移)。

2014年夏季の北極域の状況の特徴

2013年夏季の海氷域は近年では比較的広かったことから、解けにくい「越年氷」(*1)の割合が増加し、逆に解けやすい「一年氷」(*2)の割合が減少しました。

また、2014年夏季は2007年や2012年のような大規模な暖気の流入がありませんでした。

これらの要因により、2014年夏季は2007年や2012年のような広範囲での海氷の融解が起きなかったと考えられます。

*1 越年氷: 一夏以上経過した海氷。
*2 一年氷: 生成されてから夏を越えたことのない海氷。


備考

この「海氷域面積の長期変化傾向(北極域)」の診断は、NSIDC(アメリカ雪氷データセンター)提供の観測データを用いており、2013年4月1日以降はその速報値を用いて解析しています。観測や解析の方法については、北極域と南極域の海氷解析の解説を参照して下さい。

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