日本沿岸の海面水位の長期変化傾向
平成20年2月12日発表
気象庁地球環境・海洋部
診断(2007年)
ここ100年の日本沿岸の海面水位には、世界全体の海面水位にみられるような明瞭な上昇傾向はみられません。1950年ころに極大がみられ、また約20年周期の変動が顕著です。一方で、1980年代半ば以降(1985~2007年)の上昇率は年あたり3.2mmとなっています。
海面水位変動(1906~2007年)
日本沿岸で地盤変動の影響が小さい検潮所を選択しています。1906年から1959年までは4地点(左図)、1960年以降は16地点(右図)の検潮所を選択しています。1906年から1959年までは、地点毎に求めた年平均海面水位偏差を4地点で平均した値の推移を示しています。1960年以降については、日本周辺をⅠ:北海道・東北地方の沿岸、Ⅱ:関東~東海地方沿岸、Ⅲ:近畿~九州地方の太平洋側沿岸、Ⅳ:北陸~九州地方東シナ海側沿岸の4海域に分類(右図)し、海域毎に求めた年平均海面水位偏差の平均値の推移を示しています。グラフは、1971年から2000年までの期間で求めた平年値を基準としています。青線は4地点平年偏差の5年移動平均値、赤線は4海域平均偏差の5年移動平均値を示します。
忍路、柏崎、輪島、細島は国土地理院、東京(芝浦)は海上保安庁の所管です。
解説
ここ100年の日本沿岸の海面水位には、世界全体の海面水位にみられるような明瞭な上昇傾向はみられません。1950年ころに極大がみられ、また約20年周期の変動が顕著です。一方で、1980年代半ば以降(1985~2007年)の上昇率は年あたり3.2[2.2~4.2]mmとなっています。2007年の日本沿岸の海面水位は平年値(1971~2000年平均)と比べて36mm高く、1960年以降で第5位に相当します。なお、1972年の第6位を除くと、1960年以降の第1位から第10位までは1998年から2007年までの最近10年間に観測されています。
約20年周期の変動については、主に北太平洋の偏西風の強弱や南北移動を原因としていることが数値モデルを用いた解析により明らかになっています。また、地盤変化の影響を除いた海面水位の変化と表層水温の変化には良い対応がみられ、特に東シナ海で良く一致しています。
2007年2月に公表された、気候変動に関する政府間パネル(IPCC:Intergovernmental Panel on Climate Change)第4次評価報告書では「20世紀を通じた世界平均海面水位の上昇量は0.17[0.12~0.22]mと見積もられる。1961年から2003年にかけて、年あたり1.8[1.3~2.3]mmの割合で上昇した。1993年から2003年にかけての上昇率はさらに大きく、年あたり3.1[2.4~3.8]mmの割合であった。」と結論づけられています。上記のIPCC第4次評価報告書と同じ期間で日本沿岸の海面水位の変化を求めると、20世紀には有意な上昇を示しませんでした。1961年から2003年にかけては年あたり0.9[0.4~1.4]mmの割合で上昇し、1993年から2003年にかけては年あたり5.0[2.3~7.7]mmの割合で上昇しました。ここで、大括弧[ ]内に示した数値は、解析の誤差を考慮した見積もりを表します。