気象研究所 光化学スモッグ気象予測モデルによる地上オゾン分布予測

概要

 気象研究所では、光化学スモッグ気象予測モデルを用いて、光化学スモッグの大部分を占める地上オゾン濃度の予測研究を行っています。このページで は、この研究成果を試験的に公開しています。予測範囲は地球全体で、地球全体を約100kmのメッシュに分割し、毎日午前6時頃に当日、明日、明後日まで の全世界と日本を含む東アジアの予測結果図を更新します。

光化学スモッグ気象予測モデルの概要

 光化学スモッグ気象予測モデルは、天気予報などで利用される気象予測モデルと、大気の化学過程をシミュレートする化学モデルが一体となったモデル です。気象予測モデルの部分では、気象庁の気象解析値や気象予測値と整合を取りながら3日先までの気象要素(風、気圧、気温など)を計算していきます。化 学モデルの部分では、気象予測モデルで計算された気象要素をそのまま用い、光化学スモッグ関連物質の振る舞いを計算していきます。考慮している光化学ス モッグ関連物質の振る舞いは、地表面からの放出、大気による輸送・拡散、大気中での生成・消滅、地表面における沈着や降水による洗浄などがあります。光化 学スモッグ関連物質の地表面からの放出は、国立環境研究所と海洋研究開発機構、九州大学、総合地球環境学研究所などの共同研究で作られたアジア域の大気汚 染物質排出量データ(REAS)などを用いています(参考文献)。光化学スモッグ関連物質(地上オゾン)の大気中での生成消滅に関する概略図を以下に示しま す。
モデルの概要

 光化学スモッグ関連物質の計算は地球全体を約100kmのメッシュで覆って行われます。このため、光化学スモッグ関連物質の長距離輸送も取り扱うことができるという特徴があります。
 光化学スモッグ気象予測モデルは、気象庁気象研究所で開発されています。

参考文献
Ohara, T. et al.: An Asian emission inventory of anthropogenic emission sources for the period 1980-2020, Atmospheric Chemistry and Physics, 7, 4419-4444 (2007)
Horowitz, L. W. et al.: A global simulation of tropospheric ozone and related tracers: Description and evaluation of MOZART, version 2, J. Geophys. Res., 108, 4784 (2003), doi:10.1029/2002JD002853

光化学スモッグ、光化学オキシダントと地上オゾンの関係

 光化学オキシダントとは、工場や自動車から排出された炭化水素や窒素酸化物が、太陽光に含まれる紫外線により光化学反応を起こし、その結果生成される酸化力の強い有害な物質(その大部分はオゾンです)の総称で、光化学スモッグの原因となります。
 強い
光化学スモッグが発生すると、「目のチカチカ」、「息切れ」、「のどの痛み」、「頭痛」などの症状が起きます。多くの場合は一時的ですぐ治りますが、ときとして救急車で病院に運ばれるほどの重い症状にもなります。