エーロゾルに関する基礎知識

エーロゾルとは

エーロゾル(大気エーロゾル粒子)とは、空気中に浮遊するちりなどの固体や液体の粒子のことです。大きさは半径0.001マイクロメートル程度から10マイクロメートル程度で、その種類には、人為起源あるいは自然起源のガスから生成される硫酸塩、風によって巻き上げられる海塩、黄砂粒子などのダスト、化石燃料やバイオマスの燃焼から放出されるすすなどがあります。
エーロゾルは、太陽放射を散乱・吸収して地上に到達する日射量を減少させ、気温を低下させる「日傘効果」を持つ一方で、地球からの赤外放射を吸収・再放射するという「温室効果」も持っています。さらに、これらの効果のほかに、雲粒の核となる微粒子(雲核)として雲の性状(雲粒の数や粒径分布、滞留時間)を変化させることによって、地球の放射収支を変えるという効果も持っています。このようなエーロゾルが気候へ与える影響を評価するために、その組成分布、粒径分布、空間・時間分布などを把握することが必要とされています。



エーロゾルの観測

気象庁では、スカイラジオメーターや気象衛星、精密日射放射観測装置を用いてエーロゾルの観測を実施しています。 経年変化や季節変化を捉えると同時に、また、黄砂や森林火災、火山噴火に由来すると考えられる顕著なエーロゾルの増加も観測しています。


スカイラジオメーター

スカイラジオメーターの写真 網走(北海道)、石垣島(沖縄県)、南鳥島(東京都)の3地点でスカイラジオメーターによる観測を行っています。スカイラジオメーターは、大気による吸収が少ない複数の波長の太陽直達光と散乱光の強さを測定することで、エーロゾル光学的厚さ(エーロゾルによる大気の濁り具合)や粒径分布、一次散乱アルベド(エーロゾルが光を散乱(吸収)させる効果の指標)を観測することができます。粒径分布や一次散乱アルベドはエーロゾルの種類を推定する手がかりとなります。


精密日射放射観測装置

精密日射放射観測装置の写真 網走(北海道)、館野(茨城県)、石垣島(沖縄県)、南鳥島(東京都)の4地点で精密日射放射観測装置に搭載された直達日射計(左図の赤点線)を用いて直達日射の観測を行っています。直達日射とは、大気中で吸収または散乱、反射されることなく、太陽から直接地表に達する日射のことです。直達日射から算出される大気混濁係数は、大気中のエーロゾル、オゾン、水蒸気などによる日射の減衰を表す指標となり、係数が大きいほど減衰が大きいことを示します。


左図の赤点線で囲んだ装置が直達日射計

気象衛星

静止気象衛星「ひまわり」の可視・近赤外バンドの観測データを用いて、エーロゾル光学的厚さの分布を解析しています。黄砂を予測する数値モデルでエーロゾル光学的厚さの分布データを利用することにより、黄砂解析予測図を作成しています。



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