ハロカーボン類(フロン類)

令和6年8月29日更新   

 ハロカーボン類とは、ハロゲン原子であるフッ素・塩素・臭素・ヨウ素を含んだ炭素化合物の総称であり、その多くは本来自然界には存在せず、工業的に生産されたものです。
 ハロカーボン類のうち主要なものとして、いわゆるフロン類と呼ばれるクロロフルオロカーボン類(CFC)、ハイドロクロロフルオロカーボン類(HCFC)、ハイドロフルオロカーボン類(HFC)があります。このうち、CFCとHCFCは特定フロンと呼ばれ温室効果を持つとともにオゾン層を破壊する原因物質でありモントリオール議定書の規制対象物質となっています。
 一方、HFC(代替フロン)はオゾン層破壊効果はなく、CFCやHCFCの代替物質として使用されてきましたが、強力な温室効果ガスです。2016年10月には新たにHFCをモントリオール議定書の規制対象物質とする改正が行われ(2019年1月1日発効)、同改正を受けて、議定書の国内担保法である「特定物質の規制等によるオゾン層の保護に関する法律」が改正されました(2019年1月に施行)。

気象庁の観測点における大気中のクロロフルオロカーボン類の濃度の経年変化

気象庁の観測点での大気中のクロロフルオロカーボン類の濃度の経年変化

気象庁の観測点における大気中のCFC類濃度の時間変化
一部は速報値です。pptは大気中の分子1兆個中にある対象物質の個数を表す単位です。

 気象庁の観測地点である綾里における大気中のCFC-11、CFC-12及びCFC-113の月平均濃度の経年変化を示します。
 各要素いずれも季節変動は認められません。
 要素別にみると、CFC-11は、後に示す世界の経年変化と同様に、1993~1994年の約270pptをピークとして減少、CFC-12は増加が1995年頃から緩やかになり2005年頃をピークに減少、CFC-113はごく緩やかな増加が2001年頃までに止まり、その後減少傾向が見られます。

気象庁の観測点における大気中のハイドロフルオロカーボン類の濃度の変化

気象庁の観測点における大気中のハイドロフルオロカーボン類の濃度の変化

気象庁の観測地点におけるHFC類濃度の時間変化
値は速報値です。pptは大気中の分子1兆個中にある対象物質の個数を表す単位です。
※HFC-23について、2020年9月までのデータは異常値のため欠測。

 気象庁の観測地点である南鳥島における大気中のハイドロフルオロカーボン類(HFC-23, HFC-32, HFC-125, HFC-143a, HFC-134a, HFC-152a, HFC-227ea, HFC-245fa)の月平均濃度と標準偏差を示します。次に示す世界の観測結果と比較して、HFC-134a及びHFC-152aについては、大気中の濃度は北半球のほかの観測地点とほぼ同程度の値となっています。特にHFC-152aは、冬季から春季にかけて濃度が高く、夏季から秋季にかけて濃度が低くなる顕著な季節変動が見られます。

世界における大気中のフロン類とその他のハロゲン化合物の濃度の経年変化

温室効果ガス世界資料センター(WDCGG)に報告されたデータを用いて作成した経年変化図です。
対象とした気体は、以下のとおりです。

  • CFC(CFC-11、CFC-12、CFC-113)
  • 四塩化炭素(CCl4
  • 1,1,1-トリクロロエタン(CH3CCl3
  • ハロン類(Halon-1211、Halon-1301)
  • HCFC(HCFC-22、HCFC-141b、HCFC-142b)
  • HFC(HFC-134a、HFC-152a)
  • クロロメタン(CH3Cl)
  • 六フッ化硫黄(SF6)

世界における大気中のフロン類とその他のハロゲン化合物の濃度の経年変化

世界の観測点における大気中のフロン類とその他のハロゲン化合物の濃度の時間変化

 特定フロンに指定されているCFC-11、CFC-12、CFC-113に加え、CCl4およびCH3CCl3は、モントリオール議定書に基づく規制により1996年までに先進国での生産が全廃されています。これらの濃度を見ると、工業生産による増加と、生産規制による増加停止および減少の傾向がはっきり見て取れます。減少傾向の違いは、放出量の減少とともに、それぞれの物質の大気中の寿命を反映していると考えられます。また、フロン類は工業的に生産されるものがほとんどであるため、南半球より北半球の濃度が高めの傾向を示しています。

 要素別にみると、CFC-11は1992年頃を境に減少傾向に転じています。CFC-12は2003年頃まで増加し、その後減少傾向に転じています。CFC-113はCFC-11と同様な傾向を示し、北半球で1993年頃、南半球では1996年前後を境として緩やかな減少傾向に転じています。CCl4およびCH3CCl3は、ともに1990年代前半を境に、それまで上昇傾向だったのが減少に転じています。特にCH3CCl3には急激な減少が見られ、現在の濃度は一番古い観測データである1978年の値よりも低くなっています。これは、CH3CCl3の寿命が相対的に短い(約5年)ことによります。

 ハロン類もモントリオール議定書の規制対象であり、先進国では1994年までに特定ハロンの生産が全廃されています。Halon-1211は2005年頃まで増加していましたが、その後減少傾向に転じています。Halon-1301は近年増加傾向が見られなくなってきています。

 ハイドロクロロフルオロカーボン類(HCFC-22、HCFC-141b、HCFC-142b)や、ハイドロフルオロカーボン類(HFC-134a、HFC-152a)は、クロロフルオロカーボン類の代わりとして使用され大気中濃度が増加していましたが、これらもモントリオール議定書の規制対象であり、HCFC-22、HCFC-141b、HCFC-142b及びHFC-152aは、近年増加傾向が見られなくなってきています。

 CH3Clは、季節変動が明確に見られますが、経年変化はほとんど見られません。また、配電システムやマグネシウムの生産、半導体の製造等に使用される六フッ化硫黄(SF6)は、急速に増加しています。


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