エーロゾル:大気混濁係数とエーロゾル光学的厚さの経年変化

2023年7月6日更新 

診断

大気混濁係数の経年変化

 国内の直達日射量観測により得られる大気混濁係数(注)から対流圏の変動を除いたバックグランド値の1960年以降の経年変化を見ると、火山噴火による成層圏エーロゾルの影響が明瞭に確認できます。1963年から数年継続しているやや高い値、1982~1983年と1991~1993年にみられる極大は、それぞれ1963年2~5月のアグン火山噴火(インドネシア)、1982年3~4月のエルチチョン火山噴火(メキシコ)、1991年6月のピナトゥボ火山噴火(フィリピン)によって二酸化硫黄等の火山ガスが成層圏に大量に注入され、成層圏が長期間にわたって混濁した結果です。ピナトゥボ火山噴火以降は、日本における大気混濁係数はアグン火山噴火前のレベルまで戻っています。2022年1月にフンガ・トンガ-フンガ・ハアパイ火山(トンガ)で大規模な噴火が発生しましたが、2022年の日本における大気混濁係数のバックグランド値に変化は見られていません。成層圏への二酸化硫黄の注入量がピナトゥボ火山噴火と比べて少なかったため変化が検出されなかった可能性もありますが、2023年以降に変化が現れる可能性も残っています。

(注)大気混濁係数:大気中のエーロゾル、水蒸気、オゾン、二酸化炭素などの吸収・散乱による日射の減衰を表す指標で、値が大きいほど減衰が大きいことを示します。大気混濁係数は、太陽から直接地表に届く日射である直達日射から算出されます。

直達日射観測による大気混濁係数の経年変化

大気混濁係数の経年変化(1960~2022年)
国内5地点(網走、つくば、福岡、石垣島、南鳥島、ただし2020年までは網走ではなく札幌の観測値を使用)の平均を示しています。
水蒸気や黄砂の影響等を少なくするため月最小値の年平均を使用しています。


エーロゾル光学的厚さの経年変化

 綾里・札幌・網走、与那国島・石垣島では、春季にエーロゾル光学的厚さ(注)が大きくなります。これは、大陸から飛来する黄砂や大気汚染物質などの影響で、エーロゾルが多くなるためと考えられます。
 南鳥島では、ほぼ年間を通して他の観測地点と比較して、エーロゾル光学的厚さが小さな値となります。これは、日本の最東端の北太平洋上に位置しており、エーロゾルの主要な発生源である大陸から遠く、人間活動等の影響が少ないためと考えられます。しかしその中でも、春季にはエーロゾル光学的厚さがやや大きくなる傾向があります。この原因として、大陸から黄砂や大気汚染物質などが長距離輸送されて南鳥島に飛来した可能性が考えられます。

(注)エーロゾル光学的厚さ:エーロゾルの吸収・散乱による日射の減衰から算出される大気中のエーロゾルの量を示す指標で、値が大きいほどエーロゾルが多いことを示します。観測には、水蒸気やオゾンなどによって日射が吸収されない波長(500nmなど)の太陽光を用います。

サンフォトメータ観測によるエーロゾル光学的厚さの経年変化

エーロゾル光学的厚さ(500nm)の経年変化
各観測地点の月平均を示しています。
綾里(●印)の観測は、2018年4月に札幌(■印)に移転後、2021年3月に網走(▲印)に移転、
与那国島(●印)の観測は、2016年4月に石垣島(■印)に移転しました。



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