日本沿岸の海面水位上昇のやさしい解説

 このページでは、中学校で学ぶ理科や数学の知識で理解できるよう、日本沿岸と世界の海面水位上昇について解説しています。

地球温暖化と世界的な海面水位の上昇

 地球温暖化によって、世界的に海面の高さが徐々に上昇しています。研究者らは、上昇の原因は海水の熱膨張と氷床の融解が大部分を占めると報告しています。海水の熱膨張とは、(4℃以上では)水は加熱されると膨張するように、海水も空気で加熱されると膨張するため、海水の体積が増加することです。氷床の融解とは、南極やグリーンランド等にある雪や氷が融けて水になり、海に流れ込むことで、海水の体積が増加することです。海水の体積が増加した分、世界的に海面の高さが上昇します。
 世界の海面水位は、現在も徐々に上昇を続けており、1901~2018年の間に約0.2m上昇したと報告されています。また、海面水位が上昇するスピード(海面水位上昇率)は、徐々に加速していることがわかっています。世界平均海面水位は、1900年を基準として2100年には、地球温暖化による気温上昇が緩やかな場合で約0.5m、気温上昇が急速な場合で約1.0m海面水位が上昇するというコンピュータの計算結果が出ています。


日本沿岸の海面水位の変動

 日本沿岸の4地点または16地点の検潮所で観測した海面水位(潮位ともいいます)を1年間で平均し、1906年以降の各年の海面水位をグラフにしたものが日本沿岸の海面水位の長期変化傾向(図1)です。図1の〇や△は各年の平均海面水位、青線と赤線は〇と△をさらに5年(前2年と当年と後2年)で平均したものです。
 図1の青線と赤線を見ると1930年頃に山、1940年頃に谷、1950年頃に山、1960年頃に谷、1975年頃に山、1985年頃に谷、2000年頃に山、2010年頃に谷が見えます。これは10~20年ごとに繰り返し発生する変動(十年規模変動)で、自然現象により生じていると考えられています。1980年代までは、日本の海面水位の変動は、この十年規模変動が主な原因であり、長期的な海面水位の上昇は見られませんでした。一方、1980年代後半以降は、長期的な海面水位の上昇が見られるようになりました。これは、世界の海面水位上昇が加速し、日本の海面水位にも影響するようになった結果と考えられています。


海面水位の観測と地盤上下変動

 日本列島周辺は、複数のプレートがぶつかり合うことで、地殻に複雑な力が加わり、さまざまな変動が生じています。地殻変動にはさまざまなタイプがあり、長期間にわたって土地がゆっくり隆起・沈降する変動、短時間に生じる地震による変動があります。
 海面水位は、検潮所の地盤を基準とした海面の高さです。検潮所で上下方向の地盤変動があると、観測される海面水位の変動は、実際の海面水位の変動に地盤上下変動を加えたものになります。このため、気象庁では2004年から、13地点の検潮所に併設したGPSで地盤上下変動を監視し、観測された海面水位からGPSの地盤上下変動量を差し引いて(補正といいます)、日本沿岸の海面水位変動を監視しています。この13地点の各年の海面水位の平均をグラフにしたものが、日本沿岸の海面水位の長期変化傾向(図2)です。
 大地震が発生すると、検潮所で大きな地盤上下変動が発生し、観測される海面水位が地震の前後で大きく変化することがあります。図2では、大地震の影響をほとんど受けることなく、海面水位の長期変化を監視することができます。


地盤上下変動補正後の日本沿岸の海面水位の変動

 日本沿岸の海面水位の長期変化傾向(図2)の赤色のグラフが、地盤上下変動補正後の各年の平均海面水位です。長期間で見ると、海面水位が徐々に上昇していることがわかります。最小二乗法で計算すると、2006~2018年の日本の海面水位上昇率は、1年あたり約3.4mmです。世界の海面水位上昇率は、同じ期間で1年あたり約3.7mmと報告されています。日本と世界の海面水位上昇率は同程度となっています。


海面水位上昇の生活への影響

 海面水位が上昇すると、以下のような影響が発生します。

  • 海沿いの陸地が水没し、陸地の面積が減少します。小さな島では居住できなくなり、他の陸地へ移住する必要が出てきます。
  • 台風や低気圧が接近したときに生じる高潮高波による被害、強雨の時に河川の水が海に流出できないことにより生じる浸水の被害が発生しやすくなります。
  • 海水が河川に逆流しやすくなります。海水が河川に逆流すると、河口付近で塩分濃度が高くなり、飲料水の確保が難しくなります。


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