日本海固有水
令和5年7月20日 気象庁発表
(次回発表予定 令和6年12月20日)
診断(2023年)
大和海盆及び日本海盆東部において、深さ2000mの日本海固有水の長期変化は以下のとおりです。
1990年代以降、
- 水温は上昇(10年あたり0.02°C)しています。
- 溶存酸素量は減少(10年あたり7~8µmol/kg)しています。
深さ2000mの日本海固有水の水温(上)と溶存酸素量(下)の時系列
(時系列データ:水温[テキスト形式:3KB]、溶存酸素量[テキスト形式:3KB])
左図の薄い灰色で示した部分は、水深が2000mより浅い海域を示します。
水温は、水圧による水温上昇分を除いたポテンシャル水温で表します。
溶存酸素量の単位µmol/kgは、海水1kg中に含まれる酸素の物質量をµmol(マイクロモル)で表したものです。
大和海盆南西部においては1965年から、日本海盆東部においては1975年から、大和海盆北東部においては1993年から、日本海盆北東部においては2002年から観測データがあります。
解説
気象庁は、深さ2000mの水温と溶存酸素量を指標として、日本海盆から大和海盆にかけての4観測点(上図)で、日本海固有水の長期変化を監視しています。その結果、長期的な水温の上昇と溶存酸素量の減少が明らかになりました。1990年代以降、データ期間の短い日本海盆北東部を除いた3観測点では、深さ2000mにおける水温は10年あたり0.02°C上昇し、溶存酸素量は10年あたり7~8µmol/kg減少しています。また、2002年から観測を開始した日本海盆北東部でも、ほぼ同程度の速度で変化しています。
近年は、日本海固有水の形成域であるウラジオストク沖で冬季に気温が著しく下がることが少なくなり、海面の冷却が弱まる傾向にあります。その結果、日本海固有水の沈み込みが弱まり、低温で酸素が豊富な海水が深層まで供給されにくくなっていると考えられています。日本海固有水の昇温と貧酸素化は、こうした気候の変化によるものであると考えられます。