臨時診断表 黒潮が東海沖で大きく離岸

平成29年8月30日発表
気象庁地球環境・海洋部

診断

   現在、黒潮は、紀伊半島から東海沖で大きく離岸して流れています。今後、さらに南下し 、離岸した状態が継続する見込みで、大蛇行となる可能性があります。
   黒潮の流路の変動は、船舶の運航や漁業に影響があるほか、潮位上昇させ、沿岸の低地で浸水などの被害が生じる可能性があるため、注意が必要です。

図1-1 8月29日のひまわりによる海面水温画像 図1-2 8月29日の海流分布図

図1-1 8月29日(21時から30日8時の合成)の
ひまわりによる海面水温画像

水温は、図の右にあるスケールで色分けされています。本州南岸の濃い暖色帯が黒潮の 流路を示しており、東海沖で北緯31.5度付近まで南下している様子がわかります。太い点 線は現在の黒潮流路を、細線は非大蛇行接岸流路を示しています。

図1-2 8月29日の深さ50mの海流分布図
(単位ノット。1ノット=約0.5m/s)

海流の速さは、図の右にあるスケールで色分けし、赤色は強い流れを示しています。流速0.2ノット以上の流れを矢印で描画し、矢印の向きは海流の向きを示しています。この図は、海洋モデルの結果と観 測データを総合的に解析した結果を示しています。太い点線は現在の黒潮流路を、細線は 非大蛇行接岸流路を、赤い点線は黒潮から分かれた暖水を示しています。

解説

黒潮流路の状況

   現在、黒潮は、紀伊半島から東海沖で大きく離岸し、北緯31.5度、東経137.5度付近まで南下しています(図 1-1、1-2)。熊野灘から東海沖には、黒潮から分かれた暖水がみられ、紀伊半島東岸の潮位が通常より10∼20cm高くなっています(図2)。

今後の見通し

   今後、黒潮の流路は、東海沖の北緯30.5度、東経139度付近までさらに南下し、大きく離岸した状態は10月上旬でも継続している見込みで(図3)、 2005年8月以来の大蛇行となる可能性があります。

その他

   黒潮の流路の変動は、船舶の経済運航コースを左右するほか、黒潮が大きく 離岸することによって漁場の位置に影響を与えます。また、1年で最も潮位が 高くなる夏から秋には、黒潮流路の変動によって東海から関東地方沿岸で潮位 が上昇することで、沿岸の低地で浸水などの被害が生じる可能性があります。 台風や低気圧が接近した場合は、さらに潮位が高くなりますので、より一層の 注意が必要です。沿岸の地域では、気象台から発表される潮位情報等に留意し てください。

なお、気象庁では、東海沖の黒潮流路についての報道発表を行っています。

∗黒潮大蛇行とは

黒潮が潮岬で離岸した状態で安定し、かつ東海沖で北緯32度より南に位置している状態。詳しくは、海水温・海流に関する知識「黒潮」をご覧ください。

参考資料

図2 2017年8月の紀伊半島東岸(熊野)での潮位偏差

図2 2017年8月の紀伊半島東岸(熊野)での潮位偏差(天文潮位からの差)

図3左上 2017年8月29日の深さ50mの海流実況図 図3右上 2017年8月29日の深さ200mの海流実況図

図3左中 2017年9月12日の深さ50mの海流予想図 図3右中 2017年9月12日の深さ200mの海流予想図

図3左下 2017年10月2日の深さ50mの海流予想図 図3右下 2017年10月2日の深さ200mの水温予想図

図3 深さ50mの海流図(左)と深さ200mの水温図(右)
(上段:2017年8月29日、中段:2017年9月12日、下段:2017年10月2日)

海流図(左図):海流の速さは、図の右にあるスケールで色分けし、赤色は強い流れを示しています。流速0.2ノット以上の流れを矢印で描画し、矢印の向きは海流の向きを示しています。

水温図(右図):水温(単位℃)は、1℃ごとのコンターと図の右側にあるスケールで色分けして示しています。

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