日本沿岸の月平均潮位の変動

平成23年10月20日発表
気象庁地球環境・海洋部

平成23年東北地方太平洋沖地震で観測機器の破損や地盤の変動が大きかった北日本及び東日本の地点(青森県八戸~千葉県銚子漁港)については、診断を行っておりません。
また、それ以外の地点においても、潮位観測値に地盤の変動の影響が含まれている可能性があります。

診断(2011年9月)

2011年9月の月平均潮位は、最近5年間の同月の平均と比べ、三宅島では甚だ高い状態でした。また、関東地方から四国地方の太平洋沿岸や瀬戸内海および山陰、九州地方ならびに沖縄・奄美地方、小笠原諸島の沿岸では、やや~かなり高い状態でした。一方、佐渡ではかなり低い状態でした。
その他の地方の沿岸は、ほぼ例年並でした。
月平均潮位偏差分布

2011年9月 月平均潮位偏差分布


月平均潮位偏差とは、最近5年間の月平均値からの差で、正(負)の値は最近5年間の月平均値より高い(低い)ことを示しています。偏差は、図の下方にあるスケールと同じ色で分類されています。

平成23年(2011年)東北地方太平洋沖地震の影響により、▲で示した地点では診断を行っておりません。


偏差をΔHとすると、ΔHの分類は以下のとおりです。


甚だ高い +20 ≤ ΔH
かなり高い +10 ≤ ΔH < +20
やや高い +5 ≤ ΔH < +10
例年並 -5 ≤ ΔH < +5
やや低い -10 ≤ ΔH < -5
かなり低い -20 ≤ ΔH < -10
甚だ低い ΔH < -20

解説

2011年9月の月平均潮位は、最近5年間の同月の平均と比べ、三宅島では甚だ高い状態でした。また、関東地方から四国地方の太平洋沿岸や瀬戸内海および山陰、九州地方ならびに沖縄・奄美地方、小笠原諸島の沿岸では、やや~かなり高い状態でした。一方、佐渡ではかなり低い状態でした。

黒潮が三宅島の付近を流れたため、月平均表層水温が最近5年間の同月の平均に比べ4~5℃程度高い状態でした。このため、三宅島では月平均潮位が甚だ高くなったものと考えられます。
関東地方から四国地方の太平洋沿岸および瀬戸内海、九州地方では、黒潮の影響により、月平均表層水温が最近5年間の同月の平均に比べ1~2℃程度高い状態でした。また、瀬戸内海では、台風第15号の影響(吸い上げや吹き寄せ、降水)により潮位が上昇したことに加え、黒潮が、近畿・四国地方の一部沿岸に接岸したことにより、豊後水道や紀伊水道付近の潮位が15cm程度高くなったため、瀬戸内海からの水の流出が妨げられ、長期に潮位が高くなったと考えられます。このため、これらの地域の沿岸では月平均潮位が、やや~かなり高くなったものと考えられます。
山陰の沿岸では、月平均表層水温が最近5年間の同月の平均に比べ0.5~1℃程度高い状態でした。このため、山陰の沿岸では月平均潮位がやや高くなったものと考えられます。
沖縄・奄美地方の沿岸では、台風第15号の接近により月平均海面気圧が最近5年間の同月の平均に比べ2hPa程度低い状態でした。このため、これらの地域の沿岸では月平均潮位がやや高くなったものと考えられます。
先島諸島の南東にある暖水渦の影響で、石垣島地方の沿岸では、月平均表層水温が最近5年間の同月の平均に比べ0.5~1℃程度高い状態でした。このため、石垣島地方の沿岸では月平均潮位がやや高くなったものと考えられます。
小笠原諸島の沿岸では、月平均表層水温が最近5年間の同月の平均に比べ0.5~1℃程度高い状態でした。このため、この地域の沿岸では月平均潮位がかなり高くなったものと考えられます。
一方、佐渡では、月平均表層水温が最近5年間の同月の平均に比べ1~3℃程度低い状態でした。このため、この地域の沿岸では月平均潮位がかなり低くなったものと考えられます。

(参考情報:月平均表層水温の偏差海面水温・海流の月概況(関東沖海域)海面水温・海流の月概況(日本南方海域) )

なお、このページにおける偏差は、潮位、水温、海面気圧ともに最近5年間(2006~2010年)のデータの平均値からの差としています。 また、月平均潮位偏差の各地点の値は潮汐概況に掲載しています。

(参考情報:潮汐概況

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