気象台では、突風被害等を伴う災害が発生した場合、災害発生の要因となった現象と災害との関係等を迅速に把握するため、可能な限り速やかに災害が発生した地域に職員を派遣し調査を実施しています。さらに、現地調査終了後、その調査結果に加えて気象現象の発生状況、実況資料、気象台の執った措置等を速やかに取りまとめ、地方公共団体や報道機関等に対して説明を行っています。このページでは、気象台が行う突風調査(覚知から発表までの流れ)の概要を解説します。
現象の覚知
気象台では、自治体・公共機関・一般国民などからの連絡や報道機関による報道などにより、突風現象があったことを覚知します。
情報の収集
気象台では、突風現象の詳細を明らかにするため、現象を覚知したら速やかに、電話等による関係者からの聞き取りや現地調査(被害状況調査・聞き取り調査)を実施し、必要な情報を収集します。
電話等による情報収集
現地調査は気象台の限られた人員と時間では限界があることから、電話等により防災関係機関(都道府県、市町村、警察、消防、公民館、マスコミ、電力・鉄道事業者など)から収集できる情報も有効活用し、場所や被害の概要をまず把握します。また、電話等により得られた情報を参考にして、現地調査の行動計画を作成します。電話等により以下のような情報を可能な範囲で収集します。
- 被害情報の入手
- 撮影者・目撃者への確認
防災関係機関や報道機関等をとおして写真や映像を得た場合は、可能な限り撮影者と連絡をとり、撮影場所や撮影時刻、現象の様子などを確認することがあります。
- 110 番通報情報、119 番通報情報、停電情報等の入手
- 気象データの入手
防災関係機関や小中学校、高校、大学などが設置している気象観測所の記録(気温、風向風速、降水量)が現地及び周辺にあれば、提供を求める場合があります。
レーダー・アメダス等の気象観測データの解析
突風が発生した時刻や地域を中心に、気象レーダー、アメダス、気象衛星などで観測された記録を精査します。
現地調査
現地調査は、「気象庁機動調査班:JMA-MOT」としてその地域を担当する気象官署の職員が実施します。現地調査は、可能な限り突風現象を気象台で覚知した当日から実施しますが、覚知した時刻や現象の発生場所によっては、開始が翌日以降になる場合もあります。また、調査期間は、現象の規模により異なり、場合によっては数日に及ぶことがあります。なお、「気象庁 機動調査班」を派遣する場合には、当該気象官署は地元自治体と調整するとともに、派遣決定後速やかに報道にも周知します。現地調査の主な項目は以下のとおりです。
- 被害状況調査
被害・痕跡の有無、倒壊・飛散の方向、損壊の程度を調査し、被害分布図を作成します。
- 聞き取り調査
突風や被害の有無、 突風が発生した時刻、目撃・体感した現象、写真やビデオの有無など、住民への聞き取り調査を行います。
評定(現象の解明)
電話等により収集した情報、レーダーやアメダス等の気象観測データを解析した結果、現地調査の結果を総合して評定(現象の解明)を行います。
- 突風をもたらした現象の種類
竜巻、ダウンバースト、ガスフロントなど、
突風をもたらした現象の種類を評定します。なお、評定した現象の種類を、断定できる場合は、「~が発生した」、「~であった」、「~と認められる」等と表現します。断定できないが、ほぼ間違いない場合は、「~と推定した」、「~と考えられる」等の表現を用います。可能性が高い場合は、「~の可能性が高い」等の表現を用います。可能性がある場合は、「~の可能性があるが、特定には至らなかった」等の表現を用います。
- 発生及び消滅の日時・地点
地上に痕跡が認められた最初の日時・地点を発生日時・地点とし、最後の日時・地点を消滅日時・地点とします。
- 現象の強さ
- 藤田スケール
藤田スケールは、米国シカゴ大学の藤田教授が1971年に考案した竜巻等突風の強さを表現する指標です。被害調査から風速を簡便に推定することができます。藤田スケール0 は「F0」と表記します。
- 日本版改良藤田スケール
日本版改良藤田スケールは、従来竜巻等突風の強さの評定に用いてきた「藤田スケール」を最新の風工学の知見を基に改良し、平成28年4月より使用しています。日本版改良藤田スケール0は「JEF0」と表記します。
- 被害域幅と長さ
竜巻の場合には、基本的に、移動方向に沿って被害域の長さとし、それと垂直な方向を幅とします。
- その他
その他に竜巻の移動方向、継続時間と移動速度、回転方向なども可能な限り評定します。
発表(現象の評定結果の公表)
現象の評定結果は、速やかに報道発表(記者会見)するとともに、気象庁及び気象台のホームページに掲載します。発表のタイミングは以下のとおりです。
- 速報
調査を開始した当日、または翌日を目処に、調査結果を評定できた範囲で1~数枚程度にまとめて順次公表します。
- 報告
数日後を目処に、その時点で入手可能な情報を集約し、その調査結果を公表します。
- その他
その他に、社会的な影響は大きい現象が発生した場合などには、当日の気象状況をまとめた資料や突風現象の発生のメカニズムなどの解析結果なども随時、気象庁及び気象台のホームページなどで公表します。
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