よくある質問(エルニーニョ/ラニーニャ現象)
用語・指数
5か月移動平均とは何ですか
毎月の海面水温について、その月および前後2か月を含めた5か月の平均をとった値を5か月移動平均値と呼びます。5か月移動平均をとることにより、エルニーニョ現象に関わるゆっくりした変動を抽出することができます。
例えば、10月の5か月移動平均とは8〜12月の5か月の平均のことで、下の例のエルニーニョ監視海域の海面水温の基準値との差では+0.3℃となります。
( -0.1 + 0.3 + 0.2 + 0.6 + 0.5 ) ÷ 5 = +0.3
例えば、10月の5か月移動平均とは8〜12月の5か月の平均のことで、下の例のエルニーニョ監視海域の海面水温の基準値との差では+0.3℃となります。
8月 | 9月 | 10月 | 11月 | 12月 | |
基準値との差(℃) | -0.1 | +0.3 | +0.2 | +0.6 | +0.5 |
5か月移動平均(℃) | ・・・ | ・・・ | +0.3 | ・・・ | ・・・ |
( -0.1 + 0.3 + 0.2 + 0.6 + 0.5 ) ÷ 5 = +0.3
海面水温の「基準値」とは何ですか
海面水温の「基準値」は、エルニーニョ監視海域、西太平洋熱帯域およびインド洋熱帯域の海面水温の変動を評価するために設定した基準の値です。気候分野では変動を評価するための基準として平年値を用いるのが一般的ですが、平年値からの差を監視指数とすると、エルニーニョ/ラニーニャ現象より長い時間スケールの海面水温変動や地球温暖化による長期変化傾向(トレンド)等の影響によって過去のエルニーニョ/ラニーニャ現象の発生期間に偏りを生じてしまいます。そこで「基準値」からの差を監視指数とすることにより、トレンド等の影響を取り除いています。
エルニーニョ監視海域については、月別に前年までの30年間の海面水温を平均した値を基準値としています。例えば、2008年の基準値は1978年から2007年までの30年間の平均値、2009年の基準値は1979年から2008年までの30年間の平均値という具合に、年毎に平均する期間が移動して値が更新されます。
下の左図は、1950年から2022年について、4月のエルニーニョ監視海域の海面水温の観測値、平年値(1991年から2020年までの30年間の平均値)および基準値の関係、並びに海面水温の基準値との差を示したものです。海面水温の基準値との差の時系列では、観測値の時系列に見られる長い時間スケールの変動が取り除かれていることが分かります。
西太平洋熱帯域およびインド洋熱帯域については、月別に前年までの30年間の海面水温の長期変化傾向(トレンド)を直線で近似し、その直線を延長して得られた値を基準値としています。この値は、前年までの30年間の平均値に、同期間のトレンドから推定される変化分をさらに加えたもので、年によって値が異なります。例えば、2022年の基準値は、1992〜2021年の海面水温のトレンドを直線で近似して、2022年の各月に延長した値となります。
下の右図は、1950年から2022年について、4月のインド洋熱帯域の海面水温の観測値、平年値、基準値、および2022年の前30年トレンドを近似した直線、並びに海面水温の基準値との差の時系列を示したものです。1991年には平年値よりも0.30℃低かった4月のインド洋熱帯域海面水温の基準値は、近年の海面水温の上昇傾向を反映して2022年には平年値よりも0.40℃高くなっています。このことにより、海面水温の基準値との差の時系列では、観測値の時系列に見られるトレンドや長い時間スケールの変動が取り除かれていることが分かります。
エルニーニョ監視海域については、月別に前年までの30年間の海面水温を平均した値を基準値としています。例えば、2008年の基準値は1978年から2007年までの30年間の平均値、2009年の基準値は1979年から2008年までの30年間の平均値という具合に、年毎に平均する期間が移動して値が更新されます。
下の左図は、1950年から2022年について、4月のエルニーニョ監視海域の海面水温の観測値、平年値(1991年から2020年までの30年間の平均値)および基準値の関係、並びに海面水温の基準値との差を示したものです。海面水温の基準値との差の時系列では、観測値の時系列に見られる長い時間スケールの変動が取り除かれていることが分かります。
西太平洋熱帯域およびインド洋熱帯域については、月別に前年までの30年間の海面水温の長期変化傾向(トレンド)を直線で近似し、その直線を延長して得られた値を基準値としています。この値は、前年までの30年間の平均値に、同期間のトレンドから推定される変化分をさらに加えたもので、年によって値が異なります。例えば、2022年の基準値は、1992〜2021年の海面水温のトレンドを直線で近似して、2022年の各月に延長した値となります。
下の右図は、1950年から2022年について、4月のインド洋熱帯域の海面水温の観測値、平年値、基準値、および2022年の前30年トレンドを近似した直線、並びに海面水温の基準値との差の時系列を示したものです。1991年には平年値よりも0.30℃低かった4月のインド洋熱帯域海面水温の基準値は、近年の海面水温の上昇傾向を反映して2022年には平年値よりも0.40℃高くなっています。このことにより、海面水温の基準値との差の時系列では、観測値の時系列に見られるトレンドや長い時間スケールの変動が取り除かれていることが分かります。
4月のエルニーニョ監視海域の海面水温と基準値 | 4月のインド洋熱帯域の海面水温と基準値 |
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外向き長波放射量(OLR)とは何ですか
宇宙に向かって放射される赤外線の強さです。熱帯域において、これが小さいことは、対流活動が活発で降水が多いことを意味しています。
外向き長波放射量(OLR:Outgoing Longwave Radiation)は、極軌道衛星によって観測された地表面や雲頂から放射される赤外線のエネルギー量のことです。一般に物質はその温度に応じた赤外線を放出しており、温度が高いほどそのエネルギーは強くなります。赤道域で上空1万メートルにも到達する積乱雲の頂上は低い雲に比べると温度が低いので、積乱雲の雲頂から放出されるOLRは小さくなります。
つまり、OLRが小さいことは、対流活動が活発で降水が多いことを意味しています。
外向き長波放射量(OLR:Outgoing Longwave Radiation)は、極軌道衛星によって観測された地表面や雲頂から放射される赤外線のエネルギー量のことです。一般に物質はその温度に応じた赤外線を放出しており、温度が高いほどそのエネルギーは強くなります。赤道域で上空1万メートルにも到達する積乱雲の頂上は低い雲に比べると温度が低いので、積乱雲の雲頂から放出されるOLRは小さくなります。
つまり、OLRが小さいことは、対流活動が活発で降水が多いことを意味しています。
OLR指数とは何ですか
OLRから導いた上層雲量の指標の一つ。正(負)の値は雲量が平年よりも多い(少ない)状態を示します。
OLR(外向き長波放射量)を用いて対流圏上層の雲量を指数化したものがOLR指数です。 OLR指数が大きいことは、背の高い積乱雲が平年より多く発生していることを意味し、対流活動が活発で降水が多いことを意味しています。
OLR(外向き長波放射量)を用いて対流圏上層の雲量を指数化したものがOLR指数です。 OLR指数が大きいことは、背の高い積乱雲が平年より多く発生していることを意味し、対流活動が活発で降水が多いことを意味しています。
南方振動指数とは何ですか
タヒチとダーウィンの地上気圧の差を指数化したもので、貿易風の強さの目安の一つであり、正(負)の値は貿易風が強い(弱い)ことを表しています。
南方振動とは熱帯の西部太平洋と東部太平洋の間の地上気圧が、数年ごとにシーソーのように変動する現象のことで、現在では、この南方振動とエルニ−ニョ現象は、大気と海洋が密接に結びついた同一の現象のそれぞれ大気側、海洋側の側面と理解されています。
この現象が発見された20世紀初頭当時、北大西洋振動(冬季アイスランドの気圧が低いとアゾレス諸島から南西ヨーロッパにかけての気圧が高くなる)や北太平洋振動(ハワイとアラスカの気圧変動が逆になる)といった現象が北半球で発見されていたので、それらとの混同を避けるために、それらの現象よりも南で発生することから「南方」振動と名づけられました。
南方振動とは熱帯の西部太平洋と東部太平洋の間の地上気圧が、数年ごとにシーソーのように変動する現象のことで、現在では、この南方振動とエルニ−ニョ現象は、大気と海洋が密接に結びついた同一の現象のそれぞれ大気側、海洋側の側面と理解されています。
この現象が発見された20世紀初頭当時、北大西洋振動(冬季アイスランドの気圧が低いとアゾレス諸島から南西ヨーロッパにかけての気圧が高くなる)や北太平洋振動(ハワイとアラスカの気圧変動が逆になる)といった現象が北半球で発見されていたので、それらとの混同を避けるために、それらの現象よりも南で発生することから「南方」振動と名づけられました。
赤道東西風指数とはなんですか
赤道東西風指数は赤道付近における東西循環の指標の1つです。正(負)の値は西風(東風)偏差であることを示します。
インドネシア付近では海面水温が高いことから、その上空で上昇気流が生じて対流活動が活発になり、降水量が増加して、地上気圧は低くなっています。太平洋赤道域西部で上昇した空気は対流圏上層を西から東に向かい、海面水温の低い太平洋東部で下降し、東部では地上気圧が高くなっています。赤道域では、この気圧の差から、地上付近では東から西に向かう風(貿易風)が吹くことになります。
このように太平洋赤道域の対流圏では空気が地上から上層にかけて東西方向に大きく循環しており、この循環はウォーカー循環と呼ばれています。この循環が上層で(下層で)強いときに正(負)、弱いときに負(正)となる指数が赤道東西風指数です。
インドネシア付近では海面水温が高いことから、その上空で上昇気流が生じて対流活動が活発になり、降水量が増加して、地上気圧は低くなっています。太平洋赤道域西部で上昇した空気は対流圏上層を西から東に向かい、海面水温の低い太平洋東部で下降し、東部では地上気圧が高くなっています。赤道域では、この気圧の差から、地上付近では東から西に向かう風(貿易風)が吹くことになります。
このように太平洋赤道域の対流圏では空気が地上から上層にかけて東西方向に大きく循環しており、この循環はウォーカー循環と呼ばれています。この循環が上層で(下層で)強いときに正(負)、弱いときに負(正)となる指数が赤道東西風指数です。
赤道季節内振動とは何ですか
熱帯大気に見られる周期が30〜60日程度の振動のことです。
赤道季節内振動は赤道上の垂直面内で東西に広がった大規模な大気の循環の変動です。赤道域では対流活動の活発な領域が東進しながら30〜60日かけて地球を一周するのに伴って、東西風や海面気圧の変化もあわせて東に移動していくという様子が見られます。マッデンとジュリアンによって見出されたことから、マッデン−ジュリアン振動(MJO: Madden Julian Oscillation)とも呼ばれます。
赤道季節内振動は赤道上の垂直面内で東西に広がった大規模な大気の循環の変動です。赤道域では対流活動の活発な領域が東進しながら30〜60日かけて地球を一周するのに伴って、東西風や海面気圧の変化もあわせて東に移動していくという様子が見られます。マッデンとジュリアンによって見出されたことから、マッデン−ジュリアン振動(MJO: Madden Julian Oscillation)とも呼ばれます。
速度ポテンシャルとは何ですか
速度ポテンシャルは、風が周囲へ吹き出している場所や、周囲から吹き込んでいる場所を
見るために用いられます。速度ポテンシャルが周りよりも
小さい場所では風が吹き出しており、大きい場所では吹き込んでいます(気象庁以外では
逆向きに定義している場合もあります)。また、その勾配の大きさと向きが風の強さと向きを表します。
対流活動が活発な場所では、上昇した空気が対流圏上層で周囲へ吹き出しているため、
速度ポテンシャルは周りよりも小さくなります。
水温躍層とは何ですか
上下方向に水温が急激に変化する部分のことです。
水温躍層は主水温躍層と季節躍層にわけられます。赤道域ではそのうち主水温躍層が主に見られます。海面付近では日射により海水温は高い状態にありますが、深度数百mより深い場所は1年を通じて水温が低い状態でほとんど変化しません。主水温躍層はこの温度差によって生じます。
水温躍層は主水温躍層と季節躍層にわけられます。赤道域ではそのうち主水温躍層が主に見られます。海面付近では日射により海水温は高い状態にありますが、深度数百mより深い場所は1年を通じて水温が低い状態でほとんど変化しません。主水温躍層はこの温度差によって生じます。
海洋貯熱量とは何ですか
海が蓄えている熱量の指標です。深度300m程度までの平均水温により算出されます。
海が蓄えている熱量の変化は、海面水温の変化を見ただけではわからないので、この指標を用います。海の深いところではほとんど水温が変化しないので、赤道では深度300m程度までの平均水温を求めることで、海が蓄えている熱量の変化を知ることができます。海洋貯熱量が大きいということは、一般に、温度躍層が深く、高い海面水温が維持されやすいことを意味します。そのため、海洋貯熱量は将来のエルニーニョ現象を予測する上で重要な指標となります。
海が蓄えている熱量の変化は、海面水温の変化を見ただけではわからないので、この指標を用います。海の深いところではほとんど水温が変化しないので、赤道では深度300m程度までの平均水温を求めることで、海が蓄えている熱量の変化を知ることができます。海洋貯熱量が大きいということは、一般に、温度躍層が深く、高い海面水温が維持されやすいことを意味します。そのため、海洋貯熱量は将来のエルニーニョ現象を予測する上で重要な指標となります。
熱帯収束帯とは何ですか
南北両半球からの貿易風が収束する(集まる)帯状の領域です。
貿易風は北半球では北東から南西へ、南半球では南東から北西へ向かって吹いています(下図の矢印で示される地上風)。赤道付近にはこれらの風が収束する(集まる)東西に伸びた帯状の領域が存在しています(下図の陰影で示される降水域)。収束した風は上昇気流となり活発な対流活動を生じさせ、地球規模の大気の循環に大きな影響を与えます。
貿易風は北半球では北東から南西へ、南半球では南東から北西へ向かって吹いています(下図の矢印で示される地上風)。赤道付近にはこれらの風が収束する(集まる)東西に伸びた帯状の領域が存在しています(下図の陰影で示される降水域)。収束した風は上昇気流となり活発な対流活動を生じさせ、地球規模の大気の循環に大きな影響を与えます。
11月の地上風および日降水量の平年の分布 (平年の期間は1991年から2020年までの30年) |
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