よくある質問(エルニーニョ/ラニーニャ現象)

観測

海面水温の観測とはどのようなものですか
海面水温の観測は、一般船舶(篤志観測船)により海上気象観測の一項目として気圧や風、気温、湿度等とともに通報されています。また、沿岸水温の観測や漂流ブイ、海洋観測で使用されている定置ブイやアルゴフロートによる海面付近での観測結果も利用しています。
気象庁では、通報された全世界の海面水温の観測を緯度経度1度毎の領域で過去100年以上に亘って毎月の値を解析し、エルニーニョ/ラニーニャ現象等の気候変動の監視に利用しています。監視海域の海面水温とは、緯度経度1度毎に解析された海面水温を監視海域で平均した値です。
海洋観測にはどのようなものがあるのですか
観測船、一般船舶(篤志観測船)、定置ブイ、漂流ブイ、アルゴフロート等による観測があります。
 船による観測にはおよそ100年の歴史があり、特に海洋観測を専門とする船は、日本では気象庁をはじめ、大学・官庁等が所有しています。また、米国やオーストラリア、欧州の諸国も持っています。その数はさほど多くはありませんが、その精密な測定精度の点において観測船は欠くことのできない存在です。
 篤志観測船とは、依頼して気象・海洋観測を行ってもらう一般の貨物船やフェリーやタンカーなどを指しています。海洋観測に従事したことのない人でも簡単に海面から深さ数百メートルまでの表層水温を測ることができる、投下式自記水温水深計(XBT;eXpendable BathyThermograph)を積んで、表層水温観測を行ってもらっています。
 定置ブイは、漂流しないようにロープによって海底の錘等に係留されているタイプです。太平洋の赤道域では、エルニーニョ現象等に伴う熱帯の大気と海洋の変動を監視目的で、1980年代からATLASブイと呼ばれる定置ブイが展開されています。
 漂流するブイに様々なセンサーを装備し、その観測値を人工衛星を使って、地上の局に送るような観測も近年盛んに行われています。海面を漂流するタイプ、所定の深度を漂流し、浮力調節によりその深度と海面の間を行き来するアルゴフロートと呼ばれるタイプがあります。アルゴ計画という国際的な枠組みにおいて、2000年からアルゴフロートの展開が開始されています。下図左に示すように、アルゴフロートは、10日に一度、深さ2000メートルから海面までの水温と塩分の観測を行い、観測データを衛星経由で送信します。
2007年11月には観測運用しているフロートの数が目標数の3000台に到達し、下図右に示すように、深さ2000mまでの海洋観測の空白域が大幅に改善され、気象庁で運用している海洋データ同化システムで用いられる主要なデータのひとつとなっています。
アルゴフロート アルゴ分布
アルゴフロート 2009年6月24日のアルゴフロート(3338個)の分布
(気象庁ホームページより)
赤道域の海洋観測はどのように行われているのですか
1980年代に入ってから、太平洋赤道域には、ATLAS(Automated Telemetering Line Acquisition System)ブイと呼ばれるシステムが米国の海洋大気庁(NOAA)の太平洋環境研究所(PMEL)によって展開されてきました。このATLASブイは、漂流しないようロープによって海底の錘に固定されている定置ブイと呼ばれるタイプです。ブイは発泡スチロールでできており、その上に、風向・風速計、日射計、温度計、湿度計、気圧計が載せられています。また、データを衛星経由で伝送するため、アンテナが取り付けられています。また、水中部には水温計などが深さ500メートルまでに10個近く取り付けられており、これらのデータもリアルタイムで通報されます。海の中の状況を知ることは、エルニーニョ現象を理解、予測する上で非常に重要なことです。
この定置ブイは、太平洋の赤道を中心に約70基、経度10〜15度毎に規則的に配置されており、エルニーニョ現象に伴う海洋と大気の変動を明瞭に捉えることができます。この太平洋赤道域に展開しているシステムはTAO(Tropical Atmosphere Ocean)アレイと名づけられました。1999年からは、このPMELのTAOアレイと連携・協力して、日本の海洋科学技術センター(現在:海洋研究開発機構、略称:JAMSTEC)が太平洋赤道域の西部においてTRITON(Triangle Trans-Ocean buoy Network)ブイと呼ばれるATLASブイに替るブイの定置・運用を開始ししました。現在では、このシステム全体をTAO/TRITONアレイと呼んでいます。
1990年代の後半からは、PIRATA(Pilot Research Moored Array in the tropical Atlantic)と呼ばれる国際的プロジェクトにより、太平洋赤道域と同様なATLASブイが大西洋の熱帯域にも展開されています。また、2000年に入って、インド洋でもRAMA(Research Moored Array for Afican-Asian-Australian Monsoon Analysis and Prediction)と呼ばれる国際的プロジェクトによりATLASブイやTRITONブイが展開されつつあります。
TAO Array
TAO/TRITONアレイ、PIRATA、RAMA

海面水位の観測はどのようにして行われているのですか
沿岸や島の検潮所は長期間にわたって海面水位データを提供しています。
近年、衛星による観測も行われるようになりました。衛星にレーダー高度計を搭載し、地球に向かって電波を発射し、反射して戻ってくる電波をキャッチして衛星と海面の距離を測ろうというものです。海面と衛星の距離がわかると、海面の凹凸の様子がわかります。
大気の対流活動はどのようにして観測されるのですか
エルニーニョ現象の監視にとって気象衛星の最も重要な役割の1つが、太平洋熱帯域での対流活動、すなわち、積雲や積乱雲がどの程度発達しているか、どこに分布しているかを測定することです。物質はその温度に応じた量の赤外線を放出しています。上空1万メートルにも達する積乱雲の頂上では、背の低い雲に比べてずっと温度が低く、赤外線の放射量も少なくなります。この雲の頂上から放射される赤外線を気象衛星に搭載された放射計が捉えることにより積乱雲の分布を捉えることができます。 例えば、97/98年のエルニーニョ現象時の外向き長波放射量(OLR)の様子は下図のようになっています。
また、マイクロ波放射計やレーダーが衛星に搭載され、降雨分布の観測も行われています。
外向き長波放射量は熱帯域の大気の対流活動を見るのに用いられる物理量で、対流活動が活発なところほど値が小さい。エルニーニョ現象が最盛期に近い1998年1月では対流活動の中心が中部太平洋赤道域に見られる(上段)。平年時には対流活動の活発な地域がインドネシア付近にあるため、平年偏差では日付変更線を境として西部の対流活動が平年より弱い地域と東部の強い地域という顕著なパターンが見られる(下段)。
97/98年のエルニーニョ
1998年1月の月平均外向き長波放射量(上段)とその平年からの偏差(下段)
(データはNOAA(米国海洋大気庁)の提供)

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