降水・降下じん化学成分の分析

気象庁では世界気象機関(WMO)が実施している全球大気監視(GAW)計画の一環として、降水のpH(ピーエッチ又はペーハー)をはじめとして地球規模の大気の汚染状況を示す降水の各種イオン濃度などの観測を2020年末まで実施していました。降水試料の採取から分析までの処理及び分析値の品質管理については、WMO(2004)に準拠しています。
降水の採取は綾里(岩手県大船渡市(2011年末をもって観測終了))と南鳥島(東京都小笠原村(2020年末をもって観測終了))で日ごとに行い、月ごとに気象庁本庁へ採取した試料を送付します。本庁では送付された降水試料を分析し、品質管理を行った後にデータを公表しています。


観測方法

降水・降下じん試料は、地上に設置された降水・降下じん試料自動採取装置(図1)により収集しています。観測所では、降水試料を1日ごと、降下じん試料を1か月間収集し、併せて降水があった日の降水量、最大風速及び風向を記録しています。これらを気象庁本庁に送付し、分析を行っています。

降水・降下じん試料自動採取装置(南鳥島)

図1 降水・降下じん試料自動採取装置(南鳥島)

分析方法

気象庁本庁では、1か月ごとに送付されてくる降水試料を分析してpH、電気伝導度、アルカリ度と化学成分を分析しています(表1参照)。これらの分析にはフローセル型pH計、電気伝導度計、自動ビュレット、イオンクロマトグラフ、原子吸光光度計及び冷原子吸光光度計を用いています。
降水試料については1日ごとに分析を行い、各日の降水量を重みとして加重平均し、これを月平均値としています。
降下じん試料については、水溶性と難溶性とに分けて分析します。水溶成分では化学成分の分析を行い、残りをエバポレーターで蒸留して重量を測定します(表1参照)。難溶成分では有機物を燃焼して除去し、得られた灰化降下じん重量を測定します。それぞれの成分について、月間総量を求めています。


表1 気象庁の降水・降下じん化学成分分析における観測種目

観測種目 降水
(湿性降下物)
降下じん
(乾性降下物)
pH O
電気伝導度 O
アルカリ度 O
化学成分 アンモニウムイオン / NH 4+ -N O
ナトリウムイオン / Na + O O
カリウムイオン / K + O O
カルシウムイオン / Ca 2+ O O
マグネシウムイオン / Mg 2+ O O
塩化物イオン / Cl O O
亜硝酸イオン / NO 2 -N O O
硝酸イオン / NO 3 -N O O
硫酸イオン / SO 4 2− -S O O
カドミウム / Cd O
水銀 / Hg O

参考文献

WMO, 2004: The Manual for the GAW Precipitation Chemistry Programme, Global Atmosphere Watch Report No.160, WMO/TD-No.1251.

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