温室効果ガス等の観測地点
WMO全球大気監視(GAW)計画
地球環境問題の深刻さが世界的に認識されるようになり、世界気象機関(World Meteorological Organization: WMO)は、1989年に全球大気監視(Global Atmosphere Watch: GAW)計画を開始しました。この計画は、二酸化炭素などの温室効果ガスやオゾン・エーロゾルのように大気中に微量に存在する物質の濃度や、降水中の化学成分などを全世界で高精度に観測し、地球規模の大気環境の実態を把握し変化を早期に検出するとともに、予測情報を様々な利用者に提供することを目的としています。
GAW計画における観測所
GAW計画に参加している観測所は、周囲の観測環境から全球観測所と地域観測所に分類されています。
全球観測所は、局地的また地域的な汚染の影響を受けない地点で、気象や気候に影響を与える大気成分の地球規模での長期変化を明らかにすることを目的としており、できる限り観測所からのあらゆる方向の適当な範囲(30~50 km)内において、この先数十年間にわたり際だった土地利用の変化が起こらないと考えられる遠隔地に設置されるべきであると定義されています。
地域観測所はその地域を代表し、局地的な影響を受けない地点でかつ、地域的な工業活動、土地利用、エネルギー利用、森林資源の利用と言った人間活動の変化に起因する、大気成分の長期変化を明らかにすることを目的とし、観測値がその地域の特性を代表するようなところに設置されるべきであると定義されています。
気象庁による温室効果ガス等のGAW観測所
気象庁では1976年に岩手県気仙郡三陸町綾里(現大船渡市三陸町綾里)にWMO大気バックグランド汚染地域観測所(現大気環境観測所)を設立し、降水・降下じんの化学成分の観測等を開始しました。この綾里での降水・降下じんの観測は、我が国で最も長い観測期間を持ち、酸性雨の長期監視に貢献しました。さらにその後、温室効果による地球温暖化問題が世界的にクローズアップされるにつれ、気象庁は1987年より綾里において、大気二酸化炭素の定常的な観測を日本で初めて開始し、さらに、1988年よりエーロゾルの光学的厚さ、1990年よりオゾン層破壊物質及び温室効果ガスとしてクロロフルオロカーボン類(CFC-11、CFC-12、CFC-113)、一酸化二窒素、四塩化炭素及び1,1,1-トリクロロエタン、温室効果ガスとその関連ガスとしてメタン、地上オゾン及び一酸化炭素の観測を順次開始しました。
1993年には、観測環境の基準がより厳しいGAWの全球観測所として南鳥島気象観測所を開設し、二酸化炭素、メタン、地上オゾン、一酸化炭素及びエーロゾル光学的厚さなどの観測を順次開始しました。また、2020年4月からはハイドロフルオロカーボン類の観測を開始しました。さらに、2024年には綾里の大気環境観測所で行ってきた一酸化二窒素、フロン類等の観測をGAWの全球観測所である南鳥島に集約し観測を強化しました。
また、1997年から2024年までGAWの地域観測所として与那国島測候所(現与那国島特別地域気象観測所)でも、二酸化炭素、メタン、地上オゾン、一酸化炭素及びエーロゾル光学的厚さの観測を行いました。
現在の気象庁のGAW観測所の観測項目は表1のとおりです。
観測所名 |
綾里
(大気環境観測所) |
南鳥島
(南鳥島気象観測所) |
与那国島
(与那国島特別地域 気象観測所) |
昭和
(昭和基地) |
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緯度 | 39°02'N | 24°17'N | 24°28'N | 69°00'S | |
経度 | 141°49'E | 153°59'E | 123°01'E | 39°35'E | |
標高 | 260 m | 7 m | 30 m | 18 m | |
WMO国際地点番号 | 47513 | 47991 | 47912 | 89532 | |
GAW観測所分類 | 地域観測所 | 全球観測所 | 地域観測所 | 地域観測所 | |
観測種目 | 二酸化炭素 | O | O |
O
(2024年3月終了) |
|
メタン | O | O |
O
(2024年3月終了) |
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一酸化炭素 |
O
(2024年3月終了) |
O |
O
(2024年3月終了) |
||
地上オゾン |
O
(2024年3月終了) |
O |
O
(2024年3月終了) |
O | |
クロロフルオロカーボン類 |
O
(2024年3月終了) |
O | |||
一酸化二窒素 |
O
(2024年3月終了) |
O | |||
1,1,1-トリクロロエタン |
O
(2024年3月終了) |
O | |||
四塩化炭素 |
O
(2024年3月終了) |
O | |||
ハイドロフルオロカーボン類 | O | ||||
降水・降下じん化学成分 |
O
(2011年12月終了) |
O
(2020年12月終了) |
|||
エーロゾル光学的厚さ (※) |
O
(2018年3月終了) |
O |
O
(2016年3月終了) |
O | |
エーロゾル鉛直分布 |
O
(2011年12月終了) |
※エーロゾル光学的厚さの観測は北海道網走市(網走地方気象台)及び沖縄県石垣市(石垣島地方気象台)でも行っています。
それぞれの観測所の詳細については、下のリンク先をご参照ください。
観測地点
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関連情報
全球大気監視(GAW)計画に関する解説(気象庁ホームページ)
世界気象機関及び全球大気監視計画(外部リンク)
- 世界気象機関(WMO) (英語)
- 世界気象機関(WMO)全球大気監視(GAW)計画 (英語)