オゾン層の観測

 オゾン層の状況を把握するとともに、オゾン層保護のための国際的枠組みを決定する際の根拠として利用するため、 世界中でオゾン層の観測が行われています。この一環として、気象庁は分光光度計やオゾンゾンデを用いて観測地点上空のオゾン層の観測を行っています。 また、米国航空宇宙局(NASA)などでは、衛星による世界全体のオゾン層の観測が行われています。
 ここでは、気象庁が行っているオゾン層の観測および気象庁が利用している衛星観測のデータについて説明します。


分光光度計を用いたオゾン層の観測

分光光度計による観測

 分光光度計は、太陽光の波長毎の強度を測定する測器であり、オゾンに吸収されやすい波長の紫外線と、 吸収されにくい波長の紫外線の強度比を地上で測定することによって、上空のオゾンの総量を観測(全量観測)します。 また、紫外線の強度比を日の出や日没の前後で連続的に測定することにより、上空のオゾンの高度分布を5kmの層ごとに観測(反転観測)します。 気象庁ではブリューワー分光光度計を使用して観測を行っています。

ブリューワー分光光度計を用いた観測(茨城県つくば市)

オゾンゾンデを用いたオゾン層の観測

オゾンゾンデ観測

 オゾンゾンデは、大気を吸入してオゾン量を測定する測器であり、ゴム気球に吊り下げて飛揚することにより、地上から上空約35kmまでのオゾンの詳細な高度分布を直接観測します。

オゾンゾンデを用いた観測(南極昭和基地)
(第52次南極観測隊撮影)

ECCオゾンゾンデ

 気象庁が使用しているオゾンゾンデは、オゾンがヨウ化カリウム(KI)溶液中で化学反応し、電流を発生させることを利用してオゾン量を測定する電気化学反応方式(ECC型)であり、同型の測器は世界でも広く使用されています。

ECC型オゾンゾンデ


昭和基地のオゾンの鉛直分布 つくばのオゾンの鉛直分布

オゾンゾンデで観測されたオゾン鉛直分布の一例
 南極昭和基地(左)とつくば(右)で、それぞれ春に観測したオゾン分圧の鉛直分布を示したものです。 左図の黒破線は、オゾンホールが明瞭に現れる以前の10月の平均値(1968~1980年平均値)。
 南極でオゾンホールが発生する春に、昭和基地の上空約10~25km付近でオゾンが少ないことが分かります。一方、つくばでは昭和基地に見られるようなオゾンの少ない高度は見られません。



衛星によるオゾン層の観測

 衛星による観測装置は、上空約700kmの極軌道上から地表や大気によって反射・散乱される太陽紫外線の強度を測定することによりオゾン全量を観測しています。
 気象庁では衛星による観測データとして、Nimbus7、Meteor3、Earth Probeの3機の衛星のオゾン全量マッピング分光計(TOMS;Total Ozone Mapping Spectrometer)のデータと、Aura衛星のオゾン監視装置(OMI;Ozone Monitoring Instrument)のデータと、Suomi-NPP衛星のオゾン全量と鉛直プロファイル観測装置(OMPS;Ozone Mapping and Profiler Suite)を主に使用しています。ただし、Meteor3衛星以降Earth Probe衛星による観測が始まるまでの一部の期間、及びオゾンの長期変化に関連した解析の一部については、NOAA衛星搭載のタイロス実用型鉛直サウンダ(TOVS;TIROS Operational Vertical Sounder)の高分解能赤外放射計による世界のオゾン全量データ及び太陽光後方散乱紫外線計(SBUV/2;Solar Backscatter UltraViolet)による世界のオゾン全量データを使用しています。各データとその使用期間は表のとおりです。


表:解析に用いている衛星データ
衛星名 Nimbus7 Meteor3 Earth Probe Aura Suomi-NPP NOAA NOAA
国/機関 米国/NASA旧・ソ連米国/NASA米国/NASA米国/NASA・NOAA米国/NOAA米国/NOAA
観測装置名 TOMSTOMSTOMSOMIOMPSTOVSSBUV/2
期間 1978.11-1993.41993.5-1994.111996.7-2004.122005.1-2016.1-19951995
NASA(National Aeronautics and Space Administration、米国航空宇宙局)
NOAA(National Oceanic and Atmospheric Administration、米国海洋大気庁)

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