北半球高緯度のオゾン層の状況(2023年)
診断
2023年の北半球高緯度のオゾン層
2023年3月の北半球高緯度における月平均オゾン全量を、過去に大規模なオゾン層破壊が観測された2020年3月の例とあわせて図1に示します。
2023年3月の偏差分布は、北極域を中心に正偏差となり、+20%以上の正偏差の領域もみられました(図1(b))。
北半球高緯度の下部成層圏(北緯60度以北50 hPa面)における領域最低気温は、オゾン層破壊を促進させる極域成層圏雲が出現する目安の-78℃を2022年12月中旬頃から下回り、12月下旬から2023年2月上旬にかけて累年平均値より低く推移しましたが2月中旬に成層圏突然昇温が起き、領域最低気温は4月まで累年平均値より高く推移しました(図2)。
このため、2020年3月のような顕著なオゾン層破壊には至らなかったと考えられます。
(a)2023年3月のオゾン全量 |
(b)2023年3月のオゾン全量偏差 |
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(c)2020年3月のオゾン全量 |
(d)2020年3月のオゾン全量偏差 |
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図1 2023年3月及び2020年3月の北半球の月平均オゾン全量、オゾン全量偏差分布図
月平均オゾン全量の等値線間隔は15 m atm-cm、偏差の等値線間隔は5 %。
北極点付近の白色域は太陽高度角の関係で観測できない領域。
比較の基準は1997~2006年の月別累年平均値。
図は米国航空宇宙局(NASA)提供の衛星観測データをもとに気象庁で作成した。
図2 北半球高緯度上空(50hPa面)における北緯60度以北の領域最低気温の推移
赤線:2022年7月~2023年6月
、青線:2019年7月~2020年6月。
黒線:累年平均値 (7~12月は1979~2021年、1~6月は1979~2022年)。
灰色領域:標準偏差の範囲、紫色領域:最大値と最小値の範囲。
緑線:極域成層圏雲出現の目安である-78℃を示す。
気象庁の長期再解析(JRA-3Q)をもとに作成した。