日本(札幌、つくば、那覇)及び南極昭和基地の上空のオゾン層の状況(2020年)

令和3年9月7日更新

診断

オゾン全量の状況

   2020年の日本の月平均オゾン全量は、札幌では、5、6、8月に少なく注)なりました。 観測開始(1958年)以来、5月はその月として3番目に少なく、8月はその月として2番目に少ない値となりました。 つくばでは、4月に多く、6、8、10月に少なくなりました。 那覇では、3、4月に多く、6、7月に少なくなりました。 観測開始(1974年)以来、3月はその月として3番目に多く、4月はその月として1番目に多い値となりました。 これら地点の月平均オゾン全量の多寡は対流圏界面の高度の高低による影響とみられ、札幌の5月はそれに加え、高緯度側からのオゾンの少ない大気の流入の影響も考えられます。
   2020年の南極昭和基地上空の月平均オゾン全量は、1、2、3、4、8月に多くなりました。1~4月は2019年に南極上空のオゾン破壊の規模が小さかった影響と考えられます。8月は南極昭和基地が極渦の外にあったことで、極渦内でのオゾン破壊の影響を例年より受けづらかったことが要因として考えられます。一方で、例年であれば南極オゾンホールが消滅する時期にあたる11、12月は月平均オゾン全量が少なくなりました。観測開始(1961年)以来、11月はその月として1番目に少なく、12月はその月として2番目に少ない値となりました。2020年の南極オゾンホールの面積が大きく推移し消滅が観測史上最も遅く、南極昭和基地がオゾンホールの内側に位置することが多かったことによります(「南極オゾンホールの状況(2020年)」を参照)。

日本及び南極昭和基地上空の月平均オゾン全量

図1 日本及び南極昭和基地上空の月平均オゾン全量(2020年)

図の実線は参照値(1994~2008年の月別累年平均値)、縦線はその標準偏差。
南極昭和基地の点線はオゾンホールが明瞭に現れる以前(1961~1980年)の月別累年平均値。
は、月平均オゾン全量を表し、参照値と比較して「多い」こと、
は、月平均オゾン全量を表し、参照値と比較して「並」であること、
は、月平均オゾン全量を表し、参照値と比較して「少ない」ことを示す。

注)ここでは、月平均値の参照値(1994~2008年の月別累年平均値)からの差が参照値の標準偏差以内にあるときを「並」、それより多いときを「多い」、少ないときを「少ない」としている。


オゾンの高度分布の状況

   つくば上空における2020年のオゾン分圧(図2(a))は、1年を通して高度18~28 km付近にオゾン分圧の高い層を示し、中でも1~4月と12月の高度18~24km付近は高い値が観測されました。オゾン分圧の規格化偏差(図2(b))では、1~3月の高度24~28km付近と11月の高度22~34km付近、12月の高度22~26km付近でやや大きな正偏差となり、オゾン分圧の高い層の上部に対応していました。一方、4~10月の高度18~30km付近や11、12月の高度10~20km付近でやや大きな負偏差がみられ、そのうち6月の高度18~20km付近、7月~9月の高度20~22km付近、10月の高度18~30㎞付近で大きな負偏差となりました。その他、3月の高度約6km以下、5、6月の高度2km付近、7月の高度6~8km付近で大きな負偏差となりました。
   南極オゾンホールの鉛直構造の特徴は、通常はオゾンが多い高度14~22 km付近において、オゾンが大きく減少することです。 南極昭和基地上空における2020年のオゾン分圧(図2(c))は、9月中旬には高度24km以下で顕著に低くなり、ほぼ全ての高度で5mPa以下となりました。それ以降も低い状態が継続しましたが、11月中旬ごろから高度22~28km付近でオゾン分圧が高くなり、12月中旬以降は、高度18~22km付近で急激にオゾン分圧が高くなりました。オゾン分圧の月平均値による規格化偏差(図2(d))をみると、8月にみられた高度約14~32kmのやや大きな正偏差は、オゾン分圧が急激に低くなった9月に入ると解消しました。10月、11月は高度12km以下と18~24㎞でやや大きな負偏差、12月は高度約22km以下でやや大きな負偏差となりました。

(a)つくばのオゾン分圧

(b)つくばのオゾン分圧規格化偏差

オゾン分圧 オゾン分圧規格化偏差

(c)南極昭和基地のオゾン分圧

(d)南極昭和基地のオゾン分圧規格化偏差

オゾン分圧 オゾン分圧規格化偏差

図2 つくばと南極昭和基地におけるオゾン分圧と規格化偏差の高度分布(2020年)

オゾン分圧図(a)(c)はオゾンゾンデ観測の個々の観測値を、規格化偏差図(b)(d)は月平均値を用いて作成。オゾンゾンデの2020年観測総数は、つくばは40回、南極昭和基地は50回。
規格化偏差は1994~2008年における月平均値の累年平均値からの偏差を累年平均値の標準偏差で割った値。
観測値のない高度については、前後の期間のオゾン分圧から内挿処理を行っている。
1994~2008年の累年平均値及び標準偏差の図については、「オゾンの世界分布と季節変化」に掲載している。



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