黒潮の数か月から十年規模の変動(流量)

令和3年5月20日 気象庁発表

診断(2020年)

東経137度線を横切る黒潮の流量は、数年から10年程度の周期で変動しています。2010年以降では、2012年頃に極大、2015年頃に極小となっています。また、より長い期間の変化を見ると、1970年頃から1990年頃にかけて増加し、それ以降は減少しています。
黒潮の流量

東経137度線を横切る冬季・夏季の黒潮の流量の経年変化(1967年冬季~2021年冬季)

気象庁の海洋気象観測船による冬季と夏季の観測に基づいて深さ約1250mを基準とした地衡流量を計算し、本州南方における東向き流量からその南側の西向き流量(黒潮反流)を差し引いた正味の東向きの流量を黒潮の流量としています。細線は観測値、太線はその3年移動平均を表します。2009年夏季(図中'x')は、気象庁の海洋気象観測船以外のデータも利用しています。詳細については「2009年夏季の東経137度線の解析」をご覧ください。
解析には、2017年の診断(2018年5月発表)より、2018年3月に公開した「東経137度定線の長期解析結果」を使用しています。そのため、2016年の診断(2017年5月発表)以前の数値と一部異なります。

解説

黒潮は、北太平洋亜熱帯域の西岸を北向きに流れる海流で、多量の熱を低緯度域から高緯度域へと輸送しています。この黒潮による熱の輸送は、北太平洋を中心とした各地域の安定した気候の形成に大きな役割を果たしています。
東経137度線を横切る黒潮の流量は、数年から10年程度の周期で変動しています。この黒潮の流量の変動は、北太平洋の中央部における風の変化の影響を受けたものです(参考:北太平洋亜熱帯循環と代表的な海流および水塊)
また、黒潮の流量は1970年頃から1990年頃にかけて増加していましたが、それ以降は減少傾向が続いています。数値モデルによる将来予測では、地球温暖化の進行に伴って黒潮の流量が増加するとも予想されていますが(Yang et al., 2016)、これまでの黒潮流量の変化には、そういった変化傾向はみられません。将来の黒潮流量の変化について、今後も監視を続けていく必要があります。

参考文献

  • Yang, H., G. Lohamann, W. Wei, M. Dima, M. Ionita, and J. Liu, 2016: Intensification and poleward shift of subtropical western boundary currents in a warming climate. J. Geophys. Res. Oceans, 121, 4928-4945.

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