臨時診断表 2024年の日本近海の年平均海面水温が過去最高を更新

令和7年3月5日 気象庁発表

診断

   2024年の日本近海の年平均海面水温の平年差は+1.44℃で、統計を開始した1908年以降で最も高い値となりました。

図1 日本近海の全海域平均海面水温(年平均)の平年差の推移
順位平年差
12024+1.44
22023+1.10
32021+0.74
42022+0.62
52020+0.58
61998+0.56
72016+0.53
82019+0.50
92017+0.35
102001+0.28

図1 日本近海の全海域平均海面水温(年平均)の平年差の推移と順位表

図の青丸は各年の平年差、青の太い実線は5年移動平均値、赤の太い実線は長期変化傾向(この期間の平均的な変化傾向)を示す。平年値は1991年~2020年の30年間の平均値。

解説

2024年の海面水温と長期変化傾向

2024年の日本近海の年平均海面水温の平年差は+1.44℃となり、記録的に高かった2023年の+1.10℃を大きく上回り、統計を開始した1908年以降、最も高くなりました(図1)。

長期的にみると、日本近海の年平均海面水温は、100年あたり+1.33℃の割合で上昇しています。これは、二酸化炭素などの温室効果ガスの増加に伴う地球温暖化の影響と考えられます。最近5年(2020~2024年)の年平均海面水温はすべて歴代5位以内であり、近年このような記録的な高温が発生しやすくなっています。

2024年の海面水温の経過

2024年の日本近海の海面水温は、日本海や北海道南東方、本州東方では、年間を通じて概ね平年より海面水温がかなり高い状態が続きました(図2)。一方、北緯35度以南の海域では、1月から2月は広い範囲で海面水温が平年より高く、かなり高い海域も見られましたが、3月は平年より高い海域が縮小しました。4月は海面水温が平年よりかなり高い海域が拡大し、5月から6月にかけては海面水温が平年よりかなり高い海域がやや縮小しましたが、7月から11月にかけては概ね海面水温が平年よりかなり高くなりました。12月は海面水温が平年よりかなり高い海域が縮小しました。

2024年に日本近海の年平均海面水温が高くなったのは、日本付近が暖かい空気に覆われやすかったことに加え、2023年春頃から黒潮続流(日本南岸に沿って流れる黒潮の、房総半島以東の流れ)が三陸沖まで北上し続けている影響や、高気圧に覆われて平年より日射量が多かった時期があったことが要因と考えられます 。また、日本海で対馬暖流の勢力が強い時期が多かったことや、沖縄近海で平年より風が弱い時期があったことなども寄与したと考えられます。

黒潮続流の北上と釧路沖の暖水渦

2023年春頃から、例年房総半島沖を東に流れる黒潮続流が三陸沖まで北上している状況が続いています。2024年春には黒潮続流の蛇行が大きくなり、暖水の一部が暖水渦として切り離され、その後釧路沖に移動しましたが、黒潮続流が三陸沖まで北上している状況は2024年を通しておおむね続きました。黒潮続流の暖かい海水が三陸沖まで北上したこと、切り離された暖水も暖水渦として釧路沖に存在したことは、2024年の日本近海の海面水温が記録的に高かったことの一因となりました。

黒潮続流が三陸沖まで北上している状況は、2024年5月と12月に気象庁の海洋気象観測船「啓風丸」、「凌風丸」によって直接観測されました。12月の観測では、黒潮続流の蛇行の内側では、周囲に比べ海水温が海の中まで高くなっており、深さ200m程度まで広く20℃以上となっていました。

対馬暖流の勢力

2024年の対馬暖流の勢力は、4月下旬を除き、平年並か平年より強くなっていました。特に、1月から3月、6月、7月、11月は平年よりかなり強い状態でした。対馬暖流は、黒潮を起源とする暖水を北へと運び、日本海の表層水温を高く維持するように働きます。対馬暖流の勢力が平年より強いことが、日本海の高い海面水温に寄与したと考えられます。

2025年以降の海面水温の状況と今後の見通し

2025年1月に入っても、日本海北部の海面水温が解析値のある1982年以降で1月として最も高くなるなど、日本海北部や北海道南東方、本州東方を中心に海面水温が平年よりかなり高い状態が続いています(図3)。3月にかけても、これらの海域では引き続き海面水温が平年より高めで推移すると見込まれています。日本近海の海面水温は日本の天候と互いに影響しあっているだけでなく、水産資源の分布などに関連する海洋環境へも影響しており、今後も継続した監視が必要です。

最新の状況や今後の見通しについて、日本近海の海面水温、日本近海の海流、海面水温・海流1か月予報をご覧ください。

※海面水温データについて

目的に応じて、2種類の海面水温データを用いている。

  • 年平均値や長期変化傾向の診断には、長期間の評価を行うため、1度格子の海面水温格子点データを船舶やブイ等の現場観測データで補正して解析している(詳細は、「海面水温の長期変化傾向(日本近海)のデータ」参照)。 
  • 日別・旬別・月別海面水温図では、空間的に詳細な分布を把握するため、船舶やブイに加え、人工衛星による観測を用いて解析された海面水温を用いている。

そのため、データの統計期間、海域区分、海域名称が異なってます。

参考資料

2024年1月の日本近海の海面水温平年差図 2024年3月の日本近海の海面水温平年差図 2024年5月の日本近海の海面水温平年差図

2024年7月の日本近海の海面水温平年差図 2024年9月の日本近海の海面水温平年差図 2024年11月の日本近海の海面水温平年差図

図2 日本近海の月平均海面水温平年差図(単位:℃。上段左から2024年1、3、5月。下段左から7、9、11月)

平年値は1991~2020年の各月の平均値。実線は1℃ごと、破線は0.5℃ごとの等値線。暖(寒)色は平年値より高(低)い海域を示す。

2025年3月4日の海面水温平年差図

図3 2025年3月4日の海面水温平年差図

平年値は1991~2020年の各月の平均値。実線は1℃ごと、破線は0.5℃ごとの等値線。暖(寒)色は平年値より高(低)い海域を示す。

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